ポスト・トランプ相場でセクターとテーマに明暗も

 既述のとおり、ナスダック相場を象徴するハイテク(IT)系企業は、多くの優秀な外国人を雇用しており、トランプ大統領の「移民流入阻止」や「外国人雇用停止」に不満を抱く経営者が多いとされます(もちろん表立ったホワイトハウス批判は避けています)。ナスダック相場の堅調は、水面下で「ポスト・トランプ」を歓迎する動きに見えなくもありません。

 なお、民主党政権が誕生すると、すでに重視されてきた「ESG」(環境・社会・企業統治)を重視してきた企業が一段と選好される可能性がありそうです。トランプ政権下で堅調だった防衛関連や、規制強化が進むとの不安でエネルギー(石油・シェール)関連、金融(投資銀行)関連が逆風に晒される可能性には注意を要します。

 一方、最近の中国株式(上海・香港市場)の堅調回帰は、「トランプ再選失敗」を見越しているかのようです。「米中覇権争い」や「人権問題」がくすぶるなかで米国政治(特に議会)が強硬姿勢を転換する可能性は低そうですが、バイデン政権誕生で「中国関連株」が見直される可能性は否定できません。

 ただ、今後も最重要な事象は、かつて経験したことがない疫病(新型コロナ)の感染動向とその経済への影響です。投資環境として当面も想定される「低成長・低金利」の継続の方が大統領選挙より重要に思えます。

 2021年初に米大統領が交代しても、「過剰流動性相場とデジタルシフト(グロース株式優位)」が(短期的な株価変動を交えつつも)相場の基調として続くことをメインシナリオに据えた方が妥当と考えています。

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