「バイデン民主党政権誕生」に備える米国株式投資戦略

 大統領選挙と同日に実施される上院・下院の改選議席選挙の結果(現在は上院の過半が共和党、下院の過半を民主党が占める)にも注目です。

 上院が全100議席のうち3分の1、下院は435議席全てが改選されます。「トリプル・ブルー」(バイデン当選+上院も下院も民主党が議席の過半を握る)となる可能性も排除できません。直近の報道や世論調査によると、「議会選挙も民主党が優勢」との見方も出ているからです。

 4カ月未満ながら選挙までにはまだ時間があり、新型コロナの感染動向、景況感の行方、トランプ大統領の選挙運動巻き返し(「バイデン叩き」と呼ばれる)が選挙動向に与える影響に予断を許しません。

 ただ、米国民も(平均的には)トランプ大統領の言動に疲れ気味の印象です。コロナ禍の影響とはいえ、失業者が急増した(6月の失業率は11.1%)ことがトランプ大統領の逆風です。したがって、投資戦略として「バイデン民主党政権誕生」に準備する必要はありそうです。その場合、市場が直面するだろう変化とその印象を下記に整理(予想)してみたいと思います。

  1. 医療保険制度改革(オバマケア)の復活、雇用の安定、教育(負担)格差の是正などを目指し「大きな政府」を指向する。伝統的にインフラ整備のための支出拡大策も推進する。ただ、バイデン大統領は民主党内の予備選(州単位)を「中道派」として勝ち抜いてきた。結果的に、党内の「左派的政策」に偏らず、中道的政策を遂行する可能性が高い。
     
  2. とはいえ、上記目的のためトランプ政権が実施した「法人減税」を見直し、税率を引き上げる可能性は高く、市場はこの点を不安視している。ただ、コロナ禍を受けた雇用悪化対策、医療保険、所得格差是正の財源を「増税」でのみ調達せず、財政ファイナンス(国債増発→FRB買い取り=中銀の総資産拡大)を活用する「新常態」も考えられる。
     
  3. バイデン候補が大統領となれば、対中政策や通商問題に対する外交姿勢が現実的で抑制されたトーンに変化する可能性がある。トランプ大統領のように勝手な「ツイッター攻撃」で市場が混乱に追い込まれる事態はなくなりそう。バイデン民主党政権では、イラン核合意、パリ協定(地球温暖化対策)、TPPに関しても「再参加」が見込まれている。
     
  4. BLMを巡るトランプ大統領の強硬姿勢は「分断を煽っている」との批判が多い。本人は「治安優先」を標榜するが、共和党内からも批判が増加。民主党はダイバーシティ(多様性)を重視。バイデン候補は「副大統領候補には女性を指名する」と公約。「対立より融和」を指向し、黒人系女性を副大統領候補に選ぶ可能性が高い。
     
  5. そもそも歴代の民主党大統領(例:クリントン大統領やオバマ大統領)下でも株価が上昇したことは多い。その時々の景況感や金融情勢(金融政策)で相場の傾向は変わるもの。現職大統領の再選失敗が一時的に不安視されても、選挙後は政治の安定化を歓迎する可能性も。非常識な大統領(?)から常識的な大統領への移行期かもしれない。