アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2024年6月28日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。▲はマイナス。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。

 6月28日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

 なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。

円安進行や銀行株高で6月後半にかけて、もみ合い上放れ

 6月(5月31日終値~6月28日終値まで)の日経平均株価(225種)は2.8%の上昇となりました。

 5月からのボックス相場が継続する状況が続きましたが、月後半にかけて、もみ合い相場からの脱却の兆しがみられ始めています。円相場が一時1ドル=161円台まで下落し、約37年半ぶりの円安水準をつけたことが押し上げ材料となったほか、国内長期金利の上昇で金融株が上昇し、全体相場のけん引役にもなりました。

 日経平均は6月中旬に一時3万8,000円を割り込む場面が見られましたが、これは、フランスで総選挙実施が決定し、極右政権の誕生など政局不安が高まったためです。ただ、過度な懸念はすぐに後退する流れとはなりました。

 こうした中、ランキングTOP15銘柄の株価は高安まちまちの展開となりました。上昇は7銘柄、下落は8銘柄となっています。

 パチンコ製造大手SANKYO(6417)の大幅高が目立つ格好となっています。先月は減益ガイダンスが嫌気されて大きく下げましたが、アナリストリポートなどを受けて会社計画は保守的との見方が急速に強まり、見直しの動きが活発化したようです。

 製造業向け人材派遣業を手掛けるUTグループ(2146)も上昇、特に材料は表面化していませんが、調整一巡感で月半ばからリバウンドに転じました。セイノーホールディングス(9076)は三菱電機の物流子会社買収が評価材料となりました。

 一方、下げが大きかったのはTOYO TIRE(5105)で、アナリストの投資判断格下げの動き、中間期末配当権利落ちの影響が響いたようです。信販大手のジャックス(8584)は先月に引き続き、今期の2ケタ減益・減配見通しが売り材料とされる状況となっています。需給要因が中心とみられますが、電炉大手の大和工業(5444)も軟調でした。

大和工業やソフトバンクがランクイン、アナリスト評価高まる

 今回、新規にランクインしたのは、大和工業(5444)、TOYO TIRE(5105)、ソフトバンク(9434)の3銘柄で、除外されたのはFPG(7148)いすゞ自動車(7202)ローランド(7944)となっています。

 大和工業は先月にコンセンサスレーティングが基準未達となりましたが、6月には国内証券の投資判断格上げや新規買い推奨の動きが重なり、レーティングが基準値復活となっています。ソフトバンク(9434)もジェフリーズ証券の投資判断格上げでコンセンサスレーティングが基準に達しました。TOYO TIREは株価下落で利回り水準が上昇しました。

 半面、FPG、ローランドは相対的な株価上昇で利回りが低下してランキングから外れました。いすゞ自動車は国内証券の投資判断格下げでコンセンサスレーティングが基準未達となっています。

 アナリストコンセンサスが会社計画の配当予想を上回っている銘柄としては、SANKYO(6417)、西松建設(1820)、TOYO TIRE(5105)などが挙げられます。会社計画ベースでの配当利回りはSANKYOが4.58%、西松建設が4.88%、TOYO TIREが4.09%となっています。

 SANKYOは業績計画が保守的とみられ、コンセンサス水準の方が適当であるとみられます。西松建設も業績上振れでコンセンサスに近い水準が妥当とも考えられます。TOYO TIREも第1四半期の業績水準からは同様に配当金が引き上がる可能性も高いでしょう。

 一方、コンセンサス水準が会社計画を下回っているものは東洋建設(1890)で、会社計画ベースでは5.57%となっています。2025年3月期の配当計画を示したばかりであり、こちらは今後、アナリストコンセンサスが切り上がっていく可能性が高いでしょう。

「もしトラ」や仏極右政権躍進で不透明感、日銀追加利上げも

 先月後半にかけて日経平均には上放れの兆しが出ていますが、国内外の政局や金融政策の行方には不透明感が強く、楽観視はしにくい状況であると考えられます。米大統領選の第1回討論会(6月27日)ではトランプ氏が圧勝、目先は株式市場でトランプ政権の復活(もしトラ)を意識した動きとなりそうです。

 想定される財政拡張策が米金利の高止まりにつながる可能性が出てきます。また、7月7日にはフランス下院解散に伴う総選挙の決選投票日を迎えます。極右政権誕生後の不透明感が再度高まる公算は大きいようにみられます。

 7月30~31日には、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)、日本銀行の金融政策決定会合が同日に開催されます。波乱の可能性は日銀決定会合でしょう。

 日銀が国債買い入れの減額を正式に決定する可能性が高い中、足元の一段の円安進行を受けて、利上げも同時に行う余地があります。金融株などの買い材料となる一方で、全体相場にはネガティブに作用する可能性が高いと考えられます。月末にかけては警戒感が高まりやすくなるでしょう。

7月中旬に米決算発表スタート、半導体好決算なら相場上向きも

 一方、米国では7月中旬からは2024年4-6月期の決算発表がスタートします。生成AI(人工知能)関連など半導体株の想定以上の好決算が相次ぐようであれば、国内半導体の株高につながり、市場ムードの好転をもたらす余地もあります。

 なお、フランスで極右政権誕生の可能性が高いこと、トランプ氏の大統領選優位な状況からは、世界的に環境関連銘柄には逆風の流れが強まる公算が大きくなるとみられます。