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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
日経平均は重大イベントを控え上値重い。長期投資で「買い」変わらず

3回の円高ショックを乗り越えた日経平均、足元ふたたび上値重く

 日経平均株価は、円高ショックから立ち直り、回復が続いてきましたが、3万9,000円台では戻り売り圧力も強く、また上値が重くなりつつあります。米景気ソフトランディング(軟着陸)期待が強まって、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が最高値を更新しているのと対照的です。

NYダウ・日経平均の日次推移比較:2024年7月1日~10月21日(NYダウは10月18日まで)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 上の日経平均チャートをご覧いただくと分かる通り、7月11日以降、日経平均は3度にわたり「円高ショック」に見舞われています。

 7月には、米景気への不安から円高が急伸して日経平均は急落しました。8月5日には一日で4,451円安と過去最大の下げ幅を記録しました。

 その後、「米景気はそんなに悪くない」との見方が広がり、円安に戻ると日経平均も急反発しました。ところが、9月にまた、米景気の不安、円高が再燃して、日経平均は一時急落しました。

 その後、米景気は「けっこう強い」と市場コンセンサスが変わり、円安が進み、日経平均は一時4万円近くまで戻しました。ところが、9月30日に「石破ショック」【注】とも言われるミニ円高ショックがあって、日経平均は1,910円安と急落しました。

【注】石破ショック
金融市場が石破茂氏の自民党総裁就任に「円高株安」で反応した理由が二つあります。
【1】円高急伸
自民党総裁選で、日本銀行の利上げを批判している高市早苗氏が敗北、利上げを許容すると考えられていた石破氏が逆転勝利したことを受けて、円高が急伸しました。円高を嫌気して、日経平均が急落しました。
【2】石破氏は9月2日のBS日テレ番組で金融所得課税強化を「実行したい」と発言
石破氏が9月2日のBS日テレ番組で金融所得課税強化を「実行したい」と発言していたことが、不安材料となっていました。石破氏の総裁選勝利を受けて、金融所得課税強化の不安が高まり、日経平均が急落しました。

【注】金融所得課税の強化
株式の売買益や配当金などにかかる金融所得課税は、現在一律20.315%(復興特別所得税を含む)となっています。累進課税となっていないため、高所得者の恩恵が大きくなります。岸田文雄首相は、2021年の自民党総裁選で格差是正の一環として金融所得課税の見直しを公約に盛り込み、税率引き上げを目指していました。ところが、総裁選で勝った後に株価が下落したことに加え、多方面から反対が多かったことから、金融所得課税の強化は見送りました。石破氏は2日のテレビ出演で、この経緯に触れた上で、金融所得課税強化を「実行したい」と発言しました。

 10月1日に首相に就任した石破氏が、「追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」「資産運用立国の方針を継承する」など、次々とマーケット・フレンドリー(株式市場に友好的)な発言を繰り返しました。それで日経平均は再び、戻り歩調となりました。米景気好調を示す指標の発表が続き、NYダウが最高値を更新したことも追い風となりました。

 日経平均は、このように3回の円高ショックを乗り越えて、回復してきましたが、足元、上値が重くなりつつあります。