民主党政権誕生の不透明感で米国株式はいったん揺れる?

 トランプ大統領の支持率(世論調査平均)は、バイデン候補(元・副大統領)に対し劣勢を鮮明にしています。「レッドステーツ」と呼ばれる伝統的な共和党支持州(南部のフロリダ、テキサス、ルイジアナ州)は「トランプの意向を受け経済復興を急ぎ過ぎた」として感染者が増加しています。

 コロナ危機に対する取り組み、失業率の二桁台への上昇(政治は結果責任)、BLM(人種差別反対運動)デモへの強硬姿勢を巡りトランプ批判が高まっており、共和党内からも「トランプ不支持」を表明する政治家や元高官が増えています。

 6月23日に出版されたボルトン元大統領補佐官(国家安全保障担当)の暴露本に続き、7月14日には同大統領の親族(姪:メアリー・トランプ)による暴露本も発刊される予定で、これらは「大統領としてトランプ氏は不適性」と訴えています。

 図表2は、民間調査会社(PredictIt)が試算している当選予想確率です。3カ月前や1カ月前と比較して「トランプ劣勢(バイデン優勢)」が明らかです。

 大統領選挙は「直接選挙」ではなく「間接選挙」(総人口に応じた州ごとの選挙登録人を、得票数の過半を得た候補者が総取り=Winner Take All)ですが、「今日選挙が行われるとトランプが落選する可能性が濃厚」という状況です。

 8月の民主党大会(8月17日~)と共和党大会(8月24日~)での正式候補指名、9月末から10月に3回実施されるTV討論会と直後の世論調査結果次第で市場が神経質な動きを余儀なくされる可能性があります。

<図表2>大統領選挙を巡る「当選予想確率」でトランプ劣勢が鮮明に

出所:U.S. PredictItの試算より楽天証券経済研究所作成(2020年7月8日)

 そこで、第2次大戦後に「現職の大統領が再選に失敗した年」(1976年、1980年、1992年)におけるS&P500指数の動き(年初=100)とその平均推移を下記しました(図表3)。

「11月の第1火曜日」に実施されることが慣例となっている選挙直前まで上値が重く、9月から10月にかけ弱含んだ場面もみられましたが、総じて「選挙直前」や「選挙直後」からイベント通過(消化)で年末にかけ株価が堅調を取り戻した経緯がみてとれます。

 3つのケースで「現職大統領の再選失敗を受けて株価が急落した」ことはありませんでした。最近は、「バイデン勝利の影響を過度に悲観するべきでない」(米大手投資銀行)との声も出ています。

<図表3>現職大統領の再選失敗年の米国株式市場推移(市場実績)

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1976年、1980年、1992年)