中央銀行バブル崩壊のヘッジ商品はゴールドか?あるいは日本円か?

 前回のレポート『ファンドの帝王レイ・ダリオがパラダイムシフトによるゴールド投資を推奨!』、世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエーツを率いる米著名投資家のレイ・ダリオが、7月17日、リンクトインに「パラダイムシフト」と題する投稿をして株ではなくゴールドへの投資を推奨したことを書いた。

 また、6月20日のレポート『米国が実際に利下げするまでの売買戦略とポートフォリオ』では、ポール・チューダー・ジョーンズが、「これから12カ月~24カ月の時間枠で見ると、もっとも良いトレードになりそうなのは『ゴールド買い』で、節目の1,400ドルを超えれば、相場は1,700ドル近辺までトライしにいくだろう」と予測していることを紹介した。

 今週はマーク・ファーバーの相場観を紹介しておく。

【資産の一定割合を貴金属で保有することを引き続き提案したい。

『インフレの経済学』を読んで明白なように、金と外貨建て資産をいくらか保有していた人々のほうが経済的にうまく生き残れた。したがって、国際的な分散(資産保全の面からも)と資産の一定割合を貴金属で保有することを引き続き提案したい。

 シンガポールREIT(リート:不動産投資信託)は、まだ保有している。ただし、年初来の力強い成績を受けて、魅力がいくらか薄れてきた。

 不動産といえば、米国を含む大半の西洋諸国で家賃規制(そしてさらに高い税金)が導入されると考えている。これでその魅力は大きく失われるだろう。

 商業用・農業用不動産は、おそらく、より望ましい選択肢となり得る。

 最後にもうひとつ、読者と共有したい考えがある。ブレッシアーニ=トゥローニの記事を読めば、深刻な社会問題を招き、収入と富の格差を耐えられない水準にまで広げたのが紙幣増刷であることは明白だ。

 あらゆる層にとって最も公平な応急措置は、輪転機を「止める」ことである。もし米国で1%層と大多数との間に生じている政治的断絶に即時効果で対処しなければならないとすれば、私ならそうするだろう。

 金融を引き締めて(QE[量的緩和]は二度としない)、予算を均衡させる。それは、かなりの「苦痛」を伴う安定恐慌を巻き起こすと思う。しかし、この処置は奇跡も生むだろう。(マーク・ファーバー)】

(マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート【THE GLOOM BOOM & DOOM】 2019年5月号 『通貨インフレの破壊力』)

 チューダー、ダリオ、ファーバーという名うての運用者が長期的に最も恐れているのは金融政策の限界である。

 ゴールドマン・サックスからは、「相場ショック時のマネー逃避先は金より日本円が有利」というレポートが出ている。

【相場ショック時のマネー逃避先は金より日本円が有利――。米ゴールドマン・サックスが顧客向けリポートでこう推奨し、金融市場で話題になっている。伝統的に日本円や金は安全資産として見なされ、投資家がリスク回避的になると買われやすくなる。金は足元で約6年ぶりの高値圏にあり、円は相対的に割安という。】

(2019年7月24日付日経新聞『ショック時の逃避先「金より日本円」 米ゴールドマンショック時の逃避先「金より日本円」』)

 我々は資産保全のために、何らかのポートフォリオ的なヘッジを考えないといけない。