利下げは既に相場に織り込まれている
2019年7月31日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ幅について、利下げ幅が0.5%だとか0.25%だとか外野がうるさくなっている。今の相場は景況感の悪さには目をつぶって“利下げ期待だけ”で上げているから、そういう議論になるのだ。0.5%の利下げというのは市場の催促である。
筆者の独断と偏見の意見を言えば、利下げ幅が0.5%でも0.25%でも株は売られるであろう。0.5%なんてやってしまえば、当面金利は下げないので材料出尽くしとなってしまう。0.25%なら株が下がるたびに催促相場となるだろう。
足元の利下げ期待は過剰であり、市場はその反省にいくのではないだろうか。利下げ後は株高・ドル高にはなりにくいだろう。利下げは既に相場に織り込まれているからだ。
FFレート(米政策金利)の推移とバブルの崩壊
NYダウ(日足)とボラティリティ
株はボラティリティが低下していく過程でじりじり上げていく商品である
トランプ大統領が選挙対策で側近に対して「ドル安誘導の方策」を探せと命令
トランプ米大統領がドル安を望む姿勢を強調しており、大統領主導でドル売り介入に動くのでは? との見方が広がっている。
ニューズウイークやロイターをはじめ複数の報道が出ているが、ニューズウイークの報道によれば、「トランプ大統領は7月に入ってから側近に対して、ドル安誘導の方策を探せと命じた。」という。
【<「強いドル政策」はかなぐり捨てて、再選のために動く可能性>
ドナルド・トランプ米政権がドル安誘導をする可能性をほのめかしている。過去4つの政権が支持してきた「強いドル政策」を捨てるというのだ。
トランプ大統領は以前から、中国やEU(欧州連合)などが意図的な通貨安で米国に輸出ドライブをかけていると声高に非難してきた。そのトランプ大統領がドル安誘導も辞さない姿勢に転じたのは、自ら世界の国々に仕掛けてきた貿易戦争のあおりで停滞している米経済の成長を後押しするのが狙いだろう。
政治的な得点稼ぎのためにドル相場を押し下げたいというトランプ大統領の考え方は、何も新しいものではない。複数の報道によれば、トランプ大統領は7月に入ってから側近に対して、ドル安誘導の方策を探せと命じた。2020年の米大統領選前に景気を押し上げ、再選の可能性を高めるためだ。
トランプ大統領は7月3日のツイートで、中国と欧州は「為替操作ゲーム」に興じていると非難し、米国もそれに対抗すべきだとの考えを示した。
世界的な債券運用会社ピムコは、トランプ大統領は今後ドル安誘導に突き進むだろうと確信している。同社のマネージング・ディレクター兼グローバル経済アドバイザーのヨアヒム・フェルズは、トランプ大統領やトランプ政権の高官たちは、ドル安への関心を公言してきたと指摘。このことは、連邦政府が今後、為替市場に介入しかねないことを示唆していると彼は言う。
「主要な貿易国・地域の間でみられる通貨の冷戦は、2018年のはじめから休止状態だったが、いま再燃しつつある」とフェルズは指摘。さらに投資家に対するリポートには、こう書いた。
「米国をはじめとする主要国の政府や中央銀行が、自国通貨の価値を引き下げる直接介入に踏み切って本格的な通貨切り下げ戦争にエスカレートする可能性は短期的にはないものの、もはや完全には排除できなくなった」<「強いドル政策」はかなぐり捨てて、再選のために動く可能性>
ゴールドマン・サックスおよびバンクオブアメリカ・メリルリンチのストラテジストも、政府による市場介入のリスクは低いが「高まりつつある」と指摘。ゴールドマン・サックスのアナリストたちは、「トランプ大統領の通商政策にはこれまで何度も驚かされてきたので、市場は『何でもあり』の雰囲気になっている」と言う。】
(2019年7月18日 ニューズウイークTrump Considers Weakening Dollar Ahead Of 2020 Elections 「米ドル安誘導の予測、通貨切り下げ競争も排除できず」)
トランプ大統領はグローバリストではなくナショナリストであり、米国内の仕事が増え、米国の経済が成長すればよいのである。エスタブリッシュメントと言われる既存のエリートたちにとっては、トランプ大統領の常識はずれな言動は到底我慢ならない考え方だろう。だが、トランプ大統領は単純な価値観に基づいて政策を決めている。
貿易戦争も、トランプ大統領にとってはグローバルの経済やサプライチェーンがどうなろうが知ったことではない。彼が気にしているのは目の前に積み上がった米国の貿易赤字であり、米国の雇用だ。
こうした発想の一環にあるのが今回の米中貿易戦争であり、為替相場も貿易戦争の中に含まれてくる。現在、日本との通商交渉は農産物がメインとなっているが、そのうち自動車と為替に飛び火してくるのも時間の問題だろう。
円高の本番は米利下げ以降か…?利下げ後の動きに注目!
米国が“利下げ”をすると言っているのに、ドルは非常にしっかりとした動きとなっている。長期金利は3%から2019年に入り2%まで低下した。
米10年国債金利(日足)
7月以降はトレンド(方向性)のない調整相場が続いている
2019年に入って長期金利が1%も下げているのに、ドルインデックス(複数の主要通貨に対する、米ドルの為替レート[相場]を指数化したもの)はほとんど下げていない。
世界中の中央銀行が米国に追随して緩和モードとなっているなかドルの金利が相対的にまだ高いからだ。
ドルインデックス先物(週足)
長い膠着(こうちゃく)相場に嫌気が差し、最近では「ドル/円相場は動かない」とみている投資家は多い。しかし、8月相場は気をつけた方がよいだろう。過去20年、8月は円高の月となることが多いからだ。
Equity Clockというサイトには、さまざまな金融商品の過去20年間のシーズナリーチャートが掲載されている。アノマリー投資を重視する人には必見のサイトである。
日本円通貨先物相場のシーズナリーチャート(過去20年間)
日本円通貨先物相場の過去20年間の平均パフォーマンス
中央銀行バブル崩壊のヘッジ商品はゴールドか?あるいは日本円か?
前回のレポート『ファンドの帝王レイ・ダリオがパラダイムシフトによるゴールド投資を推奨!』、世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエーツを率いる米著名投資家のレイ・ダリオが、7月17日、リンクトインに「パラダイムシフト」と題する投稿をして株ではなくゴールドへの投資を推奨したことを書いた。
また、6月20日のレポート『米国が実際に利下げするまでの売買戦略とポートフォリオ』では、ポール・チューダー・ジョーンズが、「これから12カ月~24カ月の時間枠で見ると、もっとも良いトレードになりそうなのは『ゴールド買い』で、節目の1,400ドルを超えれば、相場は1,700ドル近辺までトライしにいくだろう」と予測していることを紹介した。
今週はマーク・ファーバーの相場観を紹介しておく。
【資産の一定割合を貴金属で保有することを引き続き提案したい。
『インフレの経済学』を読んで明白なように、金と外貨建て資産をいくらか保有していた人々のほうが経済的にうまく生き残れた。したがって、国際的な分散(資産保全の面からも)と資産の一定割合を貴金属で保有することを引き続き提案したい。
シンガポールREIT(リート:不動産投資信託)は、まだ保有している。ただし、年初来の力強い成績を受けて、魅力がいくらか薄れてきた。
不動産といえば、米国を含む大半の西洋諸国で家賃規制(そしてさらに高い税金)が導入されると考えている。これでその魅力は大きく失われるだろう。
商業用・農業用不動産は、おそらく、より望ましい選択肢となり得る。
最後にもうひとつ、読者と共有したい考えがある。ブレッシアーニ=トゥローニの記事を読めば、深刻な社会問題を招き、収入と富の格差を耐えられない水準にまで広げたのが紙幣増刷であることは明白だ。
あらゆる層にとって最も公平な応急措置は、輪転機を「止める」ことである。もし米国で1%層と大多数との間に生じている政治的断絶に即時効果で対処しなければならないとすれば、私ならそうするだろう。
金融を引き締めて(QE[量的緩和]は二度としない)、予算を均衡させる。それは、かなりの「苦痛」を伴う安定恐慌を巻き起こすと思う。しかし、この処置は奇跡も生むだろう。(マーク・ファーバー)】
(マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート【THE GLOOM BOOM & DOOM】 2019年5月号 『通貨インフレの破壊力』)
チューダー、ダリオ、ファーバーという名うての運用者が長期的に最も恐れているのは金融政策の限界である。
ゴールドマン・サックスからは、「相場ショック時のマネー逃避先は金より日本円が有利」というレポートが出ている。
【相場ショック時のマネー逃避先は金より日本円が有利――。米ゴールドマン・サックスが顧客向けリポートでこう推奨し、金融市場で話題になっている。伝統的に日本円や金は安全資産として見なされ、投資家がリスク回避的になると買われやすくなる。金は足元で約6年ぶりの高値圏にあり、円は相対的に割安という。】
(2019年7月24日付日経新聞『ショック時の逃避先「金より日本円」 米ゴールドマンショック時の逃避先「金より日本円」』)
我々は資産保全のために、何らかのポートフォリオ的なヘッジを考えないといけない。
全天候型ポートフォリオ構築のヒント
7月24日(水)の楽天証券のラジオ番組『先取り★マーケットレビュー』では「全天候型ポートフォリオ構築のヒント・欧州通貨のトレード」をテーマにお話ししました。ポートフォリオ運用の考え方を紹介しています。ぜひ、ご視聴ください。
7月24日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー(YouTube)はこちら
強いトレンド期を判断する新しいテクニカル指標
筆者のメインのトレード手法は「標準偏差ボラティリティトレード」だが、一般には非公開の売買手法をたくさん持っている。「それらの売買手法のノウハウを公開しなくてもよいので、シグナルだけでも発信してもらえませんか?」という要望が多いので、今後、いくつかを公開するかもしれない。
以下は、最近楽天MT4に移植した順張りの売買シグナル【チャート下段の赤(買いトレンド)と黄色(売りトレンド)のサイドバー】である。
ユーロ/ドル(日足)順張りの売買トレンドシグナル
ユーロ/ドル(4時間足)順張りの売買トレンドシグナル
ユーロ/ドル(1時間足)順張りの売買トレンドシグナル
投資の世界では条件にもよるが、3年間売買をやって生き残れる投資家の割合は、プラスサム市場の株式投資で4割、ゼロサム市場のFXでは2割程度と言われている。
年金が2,000万足りないという強迫観念から無防備に市場に入っていっても、良い結果にはならないだろう。市場は「生き馬の目を抜く」といわれる世界だからだ。
相場で生き残るために何をすればよいのかを考えないと運用はできない。筆者の公開している売買手法や売買シグナル、インディケーターなどが皆さまの運用の参考になれば幸いである。
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