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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
日経平均膠着、嵐の前の静けさ?

日経平均は3万8,000台後半で膠着

 先週(営業日6月17~21日)の日経平均株価は、1週間で218円(0.6%)下落して3万8,596円となりました。これで8週連続、日経平均は3万8,000円台を中心とした狭いレンジで膠着(こうちゃく)しています。1週間で上下500~600円程度の狭い範囲でしか動かない週が多くなっています。

日経平均週足:2024年1月4日~6月21日

出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所作成

 強弱材料が拮抗(きっこう)していることが、日経平均が大きくは上へも下へも動けない理由です。

 強材料として、米国株が強いことがあります。半導体大手エヌビディア(NVDA)を中心に生成AIラリーが続き、ナスダック総合指数の最高値更新が続いています。米国株が強いことが、日本株の下値を支えています。

 一方、日本の企業業績モメンタムの低下が日本株の上値を抑えています。認証不正に揺れる自動車産業が減益となって、全体の業績鈍化につながっています。

 テクニカル分析の視点からすると、これだけ狭いレンジで膠着した後、上または下へ動き出すと、動きが大きくなる可能性もあります。上か下かどちらか、決め打ちは難しいところですが、下に行くかもしれない気になる事象がいくつかあります。

 以下3点が気になるところです。

【1】生成AIラリーやや過熱

 生成AI関連の中核である米半導体大手エヌビディアが強いことが、生成AI関連銘柄のラリーを支えてきました。ところが、先週20日の高値から21日の終値まででエヌビディア株は約10%程度、下落しました。

 エヌビディアほどの超大型株が、小型株のように急騰していたことから、過熱が懸念されていましたが、今回の急落を経て、エヌビディア株は上値が重くなる可能性があります。そうなると、生成AIラリーがしばらくお休みとなる可能性もあります。

エヌビディア株日足:2024年5月1日~6月21日

出所:楽天証券MSIIより作成

【2】日本の企業業績モメンタムが低下

 前期(2024年3月期)非常に好調だった東証プライムの企業業績は、今期は伸びが鈍化する見込みです。会社予想の集計では、微減益となります。前期、非常に好調だった自動車産業にブレーキがかかります。

 前期は、半導体不足の解消による生産回復・リオープンによる販売回復・円安に、米国でのハイブリッド車ブームも重なり、トヨタ自動車(7203)など自動車産業の利益が高水準でした。今期は、その反動で減益となります。

 気になるのは、自動車の認証不正問題です。国交省からは、国連の基準にも違反しているとの指摘があります。日本の自動車各社が、欧米でもペナルティを課せられると、ダメージがさらに拡大します。

東証プライム上昇主要841社の連結純利益(前期比)

出所:予想は楽天証券経済研究所

【3】円安でも日本株が買われなくなってきた

 日米金利差拡大を背景に、ドル高(円安)が進み、円安を好感して、外国人投資家が日本株を買い、日本株が上昇する流れが長く続いてきました。ところが、足元、円安が進んでも日本株が買われにくくなってきました。

ドル/円為替レートと日経平均の動き:2023年1月4日~2024年6月21日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 今後、米利下げ、日本は利上げがあれば、日米金利差縮小によって円高が進む可能性があります。円高が進む時に、日本株が売られる可能性に注意が必要です。

日本株の投資戦略

 日本株の投資戦略について、結論はいつもお話ししていることと同じです。日本株は割安で、長期的に上昇余地が大きいとの見方は変わりません。

 ただし、短期的には、日経平均がスピード調整する可能性に注意が必要と考えています。少しシートベルトを締め直した方がよい状況と考えています。

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