日経平均の下値リスクを短期的には警戒

 3日の日経平均株価(225種)終値は前週末比435円高の3万8,923円でした。米国経済が堅調で、米国株が強いことを受けて、日本株も堅調に推移しています。

 とはいえ、米インフレの収束が遅れ、米長期金利が高止まりしていることに警戒が強まっています。金利上昇を無視して、PER(株価収益率)水準を切り上げつつ上昇する米国株に、不安が高まっています。

 日本のインフレ率も高まり、日本の長期金利にも上昇圧力がかかり始めています。日本のインフレ復活は、日本の企業業績に追い風ですが、それに伴う金利上昇が急過ぎると、株式市場にネガティブな影響を及ぼす可能性もあります。

 日本株は割安で、長期的に上昇余地が大きいと考えていますが、短期的には日米の金利上昇を嫌気したショック安もあり得るので、警戒が必要と考えています。

日経平均は5年以内に5万円超えを予想

 毎日のリポートでは、日経平均の短期的な見通しを書くことが多いのですが、短期的予想よりもっと重要なことは、今後4~5年の長期トレンドを考えることです。私は、日本株は割安で、中期的な上昇余地は大きいとしています。日経平均は、5年以内に5万円を超えると予想しています。

 ただし、世界景気は循環します。世界景気の後退局面が5年以内には、1度あると考えるのが自然です。それがいつになるのか、予想することは困難です。いつになるか分からない世界景気後退を乗り越えて、日経平均は5年以内に5万円を超えると予想しています。

日本の株価、地価、物価、賃金は国際比較で「割安」

 3日の日経平均は3万8,923円でした。ちょうど、バブル相場だった1989年の最高値(1989年12月29日の3万8,915円)と同水準にあります。この水準を見て、「バブルだ、もと来た道だ」と警鐘を鳴らす人もいます。私はそうは思いません。日本株は割安で、2029年までに日経平均は5万円を超えると予想しています。

 日本株がバブル相場だった1989年と今では、日本企業の財務内容、収益力、ビジネスモデル、ガバナンスがまったく異なります。日本株のPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)は当時に比べて低く、配当利回りは高くなりました。日本株は当時と比べて、格段に割安になったと判断しています。

 日本の株価、地価、物価、賃金は34年前、、国際的に比較して極めて「高い」水準にありました。東京の生活費は世界一高く、日本人の賃金は国際比較で極めて高いといわれていました。株価も不動産も、PERやイールド(利回り)で説明できない高値にありました。

 今は、その逆です。株価、地価、物価、賃金は、国際的に比較して「割安」になっていると思います。割安な株価と、経営改革が評価されて、日経平均は5万円に向けて上昇すると予想しています。

<日経平均(年次推移):1973~2024年>

出所:QUICKより作成。グラフは日経平均株価、予想PERは東京証券取引所の平均。楽天証券経済研究所が作成

 1973年当時、日経平均は5,000円前後でした。東証一部のPERは約13倍でした。この時の日本株は「割安」でした。

 ところが、その後、日経平均はどんどん上がり続け、1989年(平成元年)末に付けた3万8,915円の最高値は今年2月に更新されるまで30年以上も破られることはありませんでした。このバブル期の当時、東証一部のPERは約70倍まで上昇し、10~20倍が妥当と考える世界の常識をはるかに超えた「バブル」でした。

 バブルは、平成に入ってから崩壊しました(1989年=平成元年)。ただし、「平成の構造改革」で復活した日本株は2009年以降、再び、上昇トレンドに戻りました。今、東証プライム市場の予想PERは約16倍に低下し、再び割安になったと判断しています。

 私は「日本株は割安で長期的に良い買い場を迎えている」と考えていることをいつもお話ししています。ただし、割安な株を買えば、いつでも上昇するというわけではありません。世界景気の変動に伴って、世界景気敏感株である日本株は、外国人の売りや買いによって急落・急騰を繰り返します。

 従って、リスク管理は大切です。時間分散しながら、日本株に投資していくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。