なぜ、コモディティはブームとバストを繰り返すのか?

 市場がコモディティに熱狂するのは初めてではない。2007年から2008年半ばにかけての原油相場がそうだった。直近ではオレンジやココアなども熱狂の様相を呈している。コモディティは定期的にパフォーマンスが急上昇し、その1~2年は最もパフォーマンスの良い資産となる。しかし、その後、パフォーマンスは急反転し、最悪の資産クラスとなる。

オレンジジュースCFD(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

オレンジジュースCFD(週足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ココアCFD(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ココアCFD(週足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

銅CFD(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド) 出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

銅CFD(週足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 コモディティが繰り返すこの「ブームとバスト」について、リアル・インベストメント・アドバイスの記事「Commodities And The Boom-Bust Cycle(コモディティと好不況のサイクル)」を基に探ってみたい。この「ブームとバスト」は1970年代以降続いているという。

 以下のグラフは、過去50年間のコモディティ・インデックスの動きを示している。バイ・アンド・ホールドをした場合、投資家は40%のトータル・リターンを得ている。コモディティは目覚ましい上昇を見せた後、大暴落に見舞われるため、リターンが減少する。

CRBインデックスの推移

出所:リアル・インベストメント・アドバイス

 では、なぜコモディティは定期的にブームとバストを繰り返すのか。それはコモディティ価格の特徴に起因しているという。オレンジを基に単純化した例で考えてみよう。

1)商品サイクルの中で、商品価格が上昇する初期段階は、需要の高まりが既存の供給を上回るためである。これはオレンジジュースによく見られる現象で、干ばつや疫病のまん延により、あるシーズンの作物が全滅する。突然、オレンジジュースの既存の需要がオレンジの供給を大幅に上回る。

2)オレンジジュースの価格が上昇すると、ウォール街の投機筋はオレンジジュースの先物価格をつり上げる。より価格が上昇すると、さらに多くの投機筋が先物契約を買い、オレンジジュースの価格を上昇させる。

3)オレンジジュースの価格高騰を受け、農家はレモンの生産計画を中止し、オレンジの供給量を増やす。オレンジの生産量が増えるにつれ、オレンジの供給がオレンジジュースの需要を上回り始め、オレンジの在庫過剰になる。オレンジの供給過剰により、生産者はより安い価格でオレンジを販売することになる。

4)ウォール街の投機筋は、価格が下落すると先物契約を売り始め、価格を押し下げる。価格が下落すると、さらに多くの投機家が契約を破棄し、オレンジの先物契約を空売りし、価格はさらに下落する。

5)オレンジの価格が暴落すると、農家はオレンジの木を植えるのをやめ、再びレモンの栽培を始める。

6)このサイクルが繰り返される。

 商品価格の高騰はそれ自体を脅かす。つまり「物価高は物価高の特効薬」なのである。もし、オレンジジュースの価格が高くなりすぎれば、消費者の消費は減り、需要が減退すると同時に供給が積み上がる。

 名目GDP(国内総生産)とコモディティを比較すると、商品価格が急上昇するたびに、経済成長率が鈍化していることが分かる。消費がGDPの約70%を占めているため、当然といえば当然だ。

 コモディティとインフレの間にも高い相関関係がある。商品価格が上昇すれば、投入コストの上昇によって商品やサービスのコストも上昇することは明らかだ。また、消費者がそれらの商品やサービスの購入を減らすため、物価上昇は抑制される。前述のように、価格上昇は需要の減少をもたらす。需要の減少は物価の下落、すなわちディスインフレにつながる。

GDP(黒)とコモディティ価格(青)の推移

出所:リアル・インベストメント・アドバイス