※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【テクニカル分析】今週の日本株 定まりにくい「相場の視点」で動けない?~一部で話題の米「暴落サイン」もチェック~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し>

 今週は6月最終週になります。

 これまでの6月相場を振り返ると、ここ直近のレポートでも指摘してきたように、テクニカル分析的には、「いつ株価が大きく動き出してもおかしくない」状況ではあるものの、実際の株価の動きは「方向感がなかなか出てこない」という展開が続いています。

 そのため、今週も基本的な相場の見通し自体は変わらず、このまま膠着感が継続して月末を迎えるのか、それとも翌週の7月相場に向けて新たな動きが出てくるのかが焦点になるわけですが、まずはいつものように、先週の日経平均株価の値動きから確認していきます。

先週の日経平均の日足チャートはジワリと悪化

図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2024年6月21日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 先週末6月21日(金)の日経平均終値は3万8,596円でした。前週末終値(3万8,814円)からは218円安、週足ベースでは3週ぶりの下落に転じています。

 また、週間の値動きを辿っていくと、週初の17日(月)は前週末比で700円を超える一段安となり、取引時間中には節目の3万8,000円台を下回る場面もありました。その後は持ち直しを見せたものの、25日移動平均線が上値を抑える状態のまま週末を迎えています。下段のMACDも「0円」ラインを挟んで横ばいの推移が続いています。

 株価の下値については、図1にもあるように、4月19日、5月30日、そして先週の安値である6月17日がひとつの線で結ぶ下値ラインを描くことができ、一応、「株価が安くなったところで拾う」買い意欲が確認できます。

 その一方で、上値については、週を通じて3万9,000円台や、これまで2カ月近くにわたって意識されてきた75日移動平均線に届かず、上値を抑えている25日移動平均の傾きも下向きとなっているため、「積極的に高値をトライできない」様子もうかがえます。

 したがって、日足チャートの見た目自体は前回からあまり変わっていないように見えますが、チャートから受ける印象はジワリと悪化しています。

ボリンジャーバンドの「スクイーズ」は健在

 また、前回のレポートでは、「市場のエネルギーが溜まっている状態」を確認するテクニカル指標として、ボリンジャーバンドを紹介しました。

図2 日経平均(日足)のボリンジャーバンド(2024年6月21日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図2で注目するのは、バンド(帯)の幅が狭いところを指す「スクイーズ」の箇所です。

 ボリンジャーバンドのバンド幅は値動きの大きさを示しています。相場にトレンドが出ている時など、株価が大きく動いている局面ではバンドの幅が広くなり、反対に、値動きが小さくなっている時はバンドの幅が狭くなります。

 そこで、先週末21日時点のバンド幅を見ると1,076円です。6月に入ってからのバンド幅は、1,248円(7日)、1,105円(14日)といった具合に、着実に狭くなっています。

 一般的に、相場の膠着状態が長く続いた後に株価が動き出すと、その鬱憤を晴らすかのように、動いた方向に動きが出やすいとされていますので。引き続き、「市場のエネルギーが溜まっている状態」は健在と言えます。

中長期トレンドでの株価位置は悪くないが...

 先程の図1にもあるように、4月以降の日経平均は、目立った方向感が出ないまま、75日移動平均線に沿って2カ月近く推移してきました。

 結構長い期間が経過していますので、週足チャートでも何らかの変化が現れていないかについて確認していきます。

図3 日経平均(週足)の線形回帰トレンド(2024年6月21日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図3は日経平均の週足チャートの「線形回帰トレンド」です。起点はコロナ・ショック時に安値をつけた2020年3月19日週です。

 中長期のトレンドが右肩上がりの中、足元の株価はプラス1σ(シグマ)のところに位置しています。

 株価が上昇するのであれば、プラス2σに向かい、反対に下方向であれば回帰トレンドの中心線に向かうことになりますが、現時点の株価位置はトレンドとしてまだ強いところにあるため、このまま時間をかけてプラス1σに沿って推移し、やがて4万円台に近づくというシナリオも考えられます。

 また、図3では2本の移動平均線(26週と52週)を描いています。最近の株価は方向感のない展開が続いたことで、26週移動平均線が株価に追いつきつつあることが分かります。

 さらに、図3の週足チャートをトレンドのサイクル的に捉えると、2020年3月19日週でマイナス2σにあった株価が中心線まで上昇し、しばらくもたついた後、2021年2月19日週にプラス2σまで再上昇、その後は、26週と52週移動平均線を意識しながら、もみ合いが続くという展開でした。

 足元のトレンドサイクルも、2023年1月6日週を起点にして、マイナス2σから上昇して中心線でもたつき、2024年3月22日週にプラス2σをつけて、足元はプラス1σあたりで、26週移動平均線にタッチしたところです。今後は52週移動平均線との絡みも視野に入って来ることが予想されます。

 したがって、中長期のトレンドで見た現在の株価位置は悪くはないと言えそうですが、「4万円や直近高値(3月22日の4万1,087円)から先」をトライするだけの買い材料に乏しいことや、前回のトレンドサイクルの動きが意識される可能性を踏まえると、株価が上昇しても直近高値まで、もしくは、上値が重たいか、ある程度の調整局面も想定しておく方が良いかもしれません。