「金融環境の改善」が米国株式の強気相場を支えてきた

 米国市場では前週の「エヌビディア効果」でナスダック総合指数が連日で最高値を更新。その後、S&P500種指数は下落に転じました(29日)。

 S&Pグローバルが23日に発表した5月の企業景況感指数(速報値)やコンファレンスボードが28日に発表した5月の消費者信頼感指数が市場予想より上振れし、FRB(米連邦準備制度理事会)高官によるタカ派発言も相次いだことで債券金利が上昇して株式市場の上値を抑える場面がみられます。

 本来なら企業業績や個人消費に前向きなニュースでも、市場は時として「Good news is bad news」(良いニュースは悪いニュース)と受け止める場面があります。

 株式市場は「ゴルディロックス」(適温経済=景気が熱すぎず冷めすぎない状況)と呼ばれるソフトランディング(景気の軟着陸と金融当局による早晩の利下げ)シナリオを期待しており、強すぎる景気や物価上昇率の高止まりを債券市場も株式市場も嫌気する傾向があります。実際、金融環境の改善傾向が米国株の強気相場を支えてきました。

 図表1は、米シカゴ連邦準備銀行が算出している「金融環境指数」(Financial Conditions Index)とS&P500の推移を示したものです。金融環境指数は、市場を取り巻く金融環境の引き締まり度合いや金融ストレスの相対的水準を示します。同指数は、2022年初以来の水準に低下(金融環境が改善=金融ストレスは緩和)してきました。

 ただ、米国市場で古くからいわれてきた「セルインメイ」(相場格言:5月にいったん売ろう)に基づく需給悪化も想定されます。目先はFRBが注視する5月・PCE価格指数(31日発表)と債券市場の反応が警戒要因です。株式相場が一時的に下落しても「積み増し買い」を続けていきたいと思います。

<図表1>米国株式の強気相場は「金融環境改善」が支えてきた

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年5月29日)