夏相場入りを阻む要因?いよいよ迫る「トランプリスク」を警戒

 米国市場が上下動しつつも「夏相場」を迎えられるかどうかは、今後発表されるマクロ指標でソフトランディング・シナリオへの期待を維持できるかどうか次第です。一方、6月になると11月に実施される大統領選挙の行方を警戒する売買も本格化しそうです。なぜなら、選挙に向けて「異例の事態」が起きているからです。

 ジョー・バイデン大統領とトランプ前大統領は早々と「6月27日と9月10日にテレビ局主催の大統領候補者討論会に参加する」と合意しました。通常(1988年以降)、候補者討論会は、共和党と民主党が夏の党大会で大統領候補者を決定した後の9月から10月にかけ3回開催されるのが慣例でした。

 今回は「第1回目」が6月27日(CNNがテレビ中継)に早まりました。トランプ氏は「いかさま(crooked)ジョーと討論する用意がある」とし、バイデン大統領を「最悪の討論相手」と呼び挑発しています。

 トランプ氏の公約は、所得減税、法人減税の維持、中国からの輸入品に対する60%への関税引き上げなど労働者や企業に聞こえはよいですが、米国の公的債務を増加させてインフレ予想も高め債券価格が下落(債券金利は上昇)する事態が不安視されています。

 債券金利が上昇すると株式のバリュエーションは悪化しやすくなります。現時点での世論調査やブックメーカーではトランプ氏がやや優勢です。

 図表3が示すとおり、1970年以降に「現職大統領が再選を目指して失敗した(再選されなかった)年」は4回ありましたが、S&P500は暦年平均で16.8%上昇しました。

 4つの刑事裁判を抱えるトランプ氏の決め台詞「MAGA(Make America Great Again=米国を再び偉大にしよう)」は、「MMGA(Make Me Great Again=私を再び偉大にして=大統領特権で訴追から逃れたい)」が本音との見方もあります。

 主要メディアによると、トランプ氏が自身の不倫の口止め料を不正に処理したとして罪に問われている裁判で、陪審団は米国時間30日、同氏を34件の罪状全てで有罪とする評決を下しました。

 6月に開催される討論会と世論調査の反応を受け、市場がいよいよ「もしトラ・リスク」を本格的に織り込み始めることで株価が変動する可能性も想定しておきたいと思います。

<図表3>現職大統領・再選失敗年の米国株は「夏相場」だったが

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成

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