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著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
日銀は7月に利上げするのか?~6月の「主な意見」はタカの仮面をかぶったハト~

 日本銀行は24日、13、14の両日に開いたMPM(金融政策決定会合)の「主な意見」(「金融政策決定会合における主な意見」)を公表しました。

 7月MPM(30、31日)に利上げするかどうかを巡って何かヒントが隠れているのではと注目されましたが、筆者の受けた印象は「タカの仮面をかぶったハト」というものでした。なぜそう感じたのか、詳しく見ていきましょう。

日銀政策委員の個人消費に対する見方が下振れ

 まず一つ目のポイントは、「I.金融経済情勢に関する意見」で、個人消費に対して慎重な意見が複数見られたことです(図表1)。

<図表1 6月MPM「主な意見」に掲載された経済情勢に関する意見>

(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 植田和男総裁は常々、「物価安定の目標が実現するという見通しの確度が高まれば」、追加利上げにつながると述べているわけですが、当然のことながら、経済指標が弱まっているときにその確度(あるいは確率)が高まることは、普通はありません。

 この最初の経済情勢に関する意見を見た段階で、7月利上げの可能性は一段と遠のいたなと感じたのが正直なところです。ちなみに、消費を慎重に見ているのは日銀の政策委員だけではありません。政府も同様です。

 普段あまり注目されることのない「III.政府の意見」ですが、財務省からの出席者の意見を見ると、「個人消費は力強さを欠いており、海外経済のリスクも認識している」という下りが掲載されています(図表2)。

<図表2 6月MPM「主な意見」に掲載された政府の意見>

(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 実はこのコメント、3月MPMの「主な意見」から3回続けて掲載されており、政府の月例経済報告で個人消費に対する判断が2月に下方修正されたことと整合的です。日銀だけでなく、政府の消費に対する見方も慎重な中で、追加利上げが実施できるかというと、相当ハードルが高いと言わざるを得ません。