3. 見直されつつある中国関連株

 経済指標でみると、中国の経済成長率は減速傾向を示しています。実際、2018年の中国の実質GDP成長率は前年比+6.6%と28年ぶり低成長を記録しました。3月5日の全人代で李克強首相は、実質成長率の政府目標を従来目標(+6.5%)から「+6.0~6.5%」へ引き下げました。

ただ中国市場は

(1)中国政府はハードランディング(景気の底割れ→失業者増加→共産党への不満増加)を避けるため景気対策や金融政策を総動員して景気を下支える
(2)「一帯一路」(中国独自の交易経済圏構想)を推進してインフラ整備需要(雇用)を拡大させる
(3)米国からの構造改革圧力を「黒船」(日本の例:江戸幕府に開港を迫った米国の軍艦)と考え、共産党の統治下では困難だった経済・産業の改革開放や構造改革を促すことを期待しているのかもしれません。

 特に(1)は、李首相が5日の全人代で「2019年に2兆元(約33兆円)規模の減税と社会保険料引き下げを実施する」と表明しました。昨年より導入された施策(輸入関税引き下げや自動車減税など)を含めると「景気対策の総額は3兆元(約50兆円)を上回る」との試算もあります。

 日本でも、2012年末に安倍政権が誕生し、実体経済が良くなる前に「アベノミクス相場」(経済効果を織り込む株式相場)がスタートしました。中国の経済政策が、昨年までの「債務膨張の抑制重視」から、財政出動と金融緩和を組み合わせる「景気下支え重視」に政策を転換させたなら、中国市場も「国策に売りなし」との格言を象徴する展開と言えそうです。

 図表4は、日経中国関連株指数を構成する50銘柄のうち、「年初来騰落率」の降順で15銘柄のみを一覧したものです。中国市場の堅調が、今年後半からの製造業景況感や設備投資需要の回復を視野に入れる動きとみるなら、日本の中国関連株も収益見通しの底入れを確認しながら、先行きの業績改善を織り込む動きに向かう可能性があります。予想PERが比較的低く、来年度(20年3月期)予想増減益率で増益が見込まれている銘柄に注目したいと思います。

 

図表4:年初来騰落率で上位の中国関連株(参考情報)

*「日経中国関連株指数」を構成する50銘柄のうち年初来株価騰落率(3月6日時点)で上位15銘柄を示したものです。
*「予想PER」と「予想増益率」はアナリスト予想平均(市場予想平均)にもとづく試算です。
*上記は個別銘柄を推奨する目的のものではなく、将来の投資成果を保証するものではありません。
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019/3/6)

 

 

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