人民元相場の戻りは中国関連株の支え

 為替相場でも中国通貨・人民元の対円相場が回復傾向をたどっています。図表2は、2018年以降の人民元相場(対円相場)と「日経中国関連株指数」の推移を示したものです。

 日経中国関連株指数は、中国で積極的に事業展開を進めている日本のグローバル企業50社で構成される時価総額加重平均指数です。中国関連株は、それぞれの業績見通しが中国の景況感、設備投資需要、人民元相場の動向から影響を受けやすい特徴があります。

 チャイナリスク(成長率の減速観測と貿易摩擦の影響懸念)を受けて昨年下落した人民元相場は現在回復しつつあり、中国関連株の業績見通しを巡る過度の悲観を後退させていることを示しています。米中貿易交渉の行方に予断を許しませんが、先行き見通しを織り込もうとする株式と為替は、チャイナリスクがいったん山を越えたとみていることがわかります。今後は、中国関連株それぞれの業績見通しや事業戦略を見極める動きとなりそうです。

図表2:人民元相場の戻りは中国関連株の追い風

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019年3月6日)

 一方、インバウンド(日本を訪問する外国人観光客)動向でも、訪日中国人の存在感が強まっています。JNTO(日本政府観光局)が2月20日に発表した最新統計(推計値)によると、2019年1月の訪日外国人数は総計268.94万人と前年同月比で7.5%増加。1月として過去最高を記録し、12カ月累計(2018年2月~19年1月)は約3138万人となっています。

 なかでも、1月の訪日中国人数は75.44万人と前年同月比で、19.3%増加。航空座席供給量が増加したことや、今年の旧正月が2月上旬となった影響で1月末の訪日需要が拡大したことも要因にありますが、昨年夏以降に懸念された「日本の自然災害の影響や中国景気減速を受けた中国からのインバウンド減退」は杞憂となりました。

 図表3で示す通り、訪日中国人数の12カ月累計は約850万人となっており、訪日外国人数全体の約27%を占めるまでに拡大しています。とは言っても、訪日外国人の消費需要も、従来みられた「モノ消費」(商品の爆買い)から「コト消費」(観光体験)に変化しています。

 また、年明けから中国政府は免税品に対する規制強化を実施。「転売」を目的とした訪日動機や購買意欲が抑制されたことで、日本国内の一部小売業者(百貨店など)の売上高に影響を与え始めています。ただ、人民元相場の回復は、訪日中国人の日本滞在中の購買力を下支える動きと考えられ、米トランプ政権が(交易条件として)人民元高を望んでいることもあり注目したいと思います。

 

図表3:訪日中国人数も増勢を取り戻した 

注:上記は訪日外国人数と訪日中国人数の12カ月(1年)累計総数を示したものです。
出所:日本政府観光局のデータより楽天証券経済研究所作成(2008/1~2019/1)