少し前、複数のファンドから、「ビットコインのシェアは日本が40%で、日本人はビットコインで買い物をしているという記事をネットで呼んだがそれは本当か?」という照会があり、ちょっとうんざりしていたが、今度は筆者の海外の友人が長年付き合っている世界的に著名な医師の病院がクラッキングにあってファイルを盗まれたらしい。例によって、「返してほしかったらビットコインで送金しろ」という脅迫メールが来て、「こんな犯罪に使われる仮想通貨を誰が認めるのだ!」と、その医師は激怒しているという。


ビットコイン/円(日足)

上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
出所:石原順

 ブラジルの友人は、「物価が上がり20%くらいのインフレになっているブラジルでは企業の首切りが増えているが、会社をクビになるとみんな100万円くらいの退職金をもらう。家族持ちは別だが、親と同居している独身者はそのクビ切りの退職金でビットコインを買うのだという。夢も希望もない中で、一か八かの一獲千金狙いにいくのだ」と、ビットコイン投資について語っていた。

 また、米国の株式ファンドの運用者は、「ビットコインが昨年20倍になったことで、楽観的で大雑把な相場観をいう人が増え、投資詐欺などの事件が増えている。そのこと自体はどうでもいいが、注目すべきは、この手の事件はバブル相場の一番高いときに出てくることだ」と語っている。彼らの株式ファンドの現金比率は、現在80%に達しているという。はっきり言って、何も運用していないに等しい。

 筆者はビットコイン投資を肯定も否定もしない。「実際に何をやっているかなど、どうでもよい。問題は、何をやったと民衆に信じ込ませられるかである」と、アーサー・コナン・ドイルが言うように、流動性バブルの局面では、投資家は上がるものなら何でも買うのである。

 ただ、今のビットコインブームというのは仮想通貨の将来性やブロックチェーンの技術とは違うところで起きているのではないかと思っている。それは、FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)の影響である。スイスの銀行にもうコンフィデンシャリティ(守秘義務)はない。パナマ文書 やパラダイス文書の暴露で、タックスヘイブン(租税回避地)も危ない。行き場のないアングラマネーの一部が仮想通貨市場に流入しているのだ。では、ビットコインにコンフィデンシャリティ(守秘義務)は期待できるのかと言えば、その匿名性の崩壊は時間の問題だろうと思われる。