欧州の天然ガス価格高騰はビジネスチャンス

 米国国内の長期的な電源構成の変化により、今後さらに天然ガスに注目が集まる可能性があると書きました。ここからは、米国国外の事情起因で、天然ガスと原油に注目が集まりつつある例を述べます。

 ウクライナ危機が勃発したことをきっかけに、制裁を科すため、西側諸国はロシアから天然ガスや原油を買わない方針を打ち出しています。一方、ロシアは天然ガスや原油の出し渋りをするそぶりを見せています。

「買わない西側・出さないロシア」という図式は、前回の「原油下落でも残る不安。投資のアイデアはある?」で述べたとおり、特に欧州での需給のひっ迫度を高め、世界的な天然ガス価格高騰・原油高止まりの主因になっています。

 こうした欧州の需給ひっ迫を和らげる策として行われているとみられるのが、米国の欧州向け輸出拡大です。欧州の天然ガス価格が急騰し始めた2021年秋ごろから、EU(欧州連合)諸国向けの天然ガスの輸出が急増しはじめました。

 その後、ウクライナ危機が勃発し「買わない西側・出さないロシア」により、需給のひっ迫度がさらに高まったことを受け、EU諸国向けの輸出がさらに増加・高止まりしています。

 原油も、ウクライナ危機が勃発し、欧州主要国が「買わない」姿勢を鮮明にした頃から、EU諸国向けの輸出増加が目立ち始めています。

図:米国の天然ガス(LNG)と原油輸出量の推移(EU諸国・アジア諸国向け)

出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 欧州向けの輸出増加は、米国国内で操業する石油・天然ガス会社にとって、大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。