米国市場は「企業収益の拡大期待」が支え

 米国株高を支えているのは、緩和的な金融環境と収益(業績)見通しの好調です。IMF(国際通貨基金)は、最新の世界経済見通しで2021年の米国の実質GDP成長率を+7.0%と予想しています。強弱を交えつつ経済が正常化をたどるなら、製造業もサービス業も企業収益は改善する見込みです。

 図表3は、S&P500・10大業種別株価指数をベースに、(1)2021年、2022年、2023年の予想増減益率(予想EPSの前年比伸び)、(2)2019年から2023年までの予想増減益率を一覧にしたものです。

 (2)で示すコロナ危機前(2019年)の実績EPSに対する2023年予想EPSの伸び率の降順(高い順)に並べました。セクター(業種)別には、コミュニケーションサービス(92.0%増益)、IT(+89.1%)、素材(+85.6%)、ヘルスケア(+67.1%)、一般消費財・サービス(+64.0%)に特に高い利益成長が見込まれています。

 参考までに、コミュニケーションサービスにはアルファベット(グーグル)とフェイスブックが含まれ、IT(情報技術)にはアップル、マイクロソフト、エヌビディアなど大手テクノロジー企業、一般消費財・サービスにはアマゾン・ドット・コムが含まれています。

<図表3:米国市場で長期利益成長率予想が高い業種>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年8月4日)

 図表4は、市場平均(S&P500指数)ベースのEPSの見通し(2021年、2022年、2023年は市場予想平均)を示したものです。売上高の回復・拡大、利益率の改善、自社株買いなどの効果で、2021年の予想EPSは前年比60%超の増益が見込まれ、2019年の最高益を更新する見通しとなっています。

 また、2022年と2023年も増益基調と最高益更新が見込まれています。年後半から来年にかけて米国の経済成長率は巡航速度に減速すると思われますが、景気の回復が続く限り、業績は改善基調をたどっていくと考えられます。

 前述のように米国株は、夏秋にボラティリティーが高まる可能性があります。「株価は業績」との格言に倣い、長期的な収益成長見通しに注目した「押し目買い」や「積み増し買い」で冷静に対応したいと思います。

<図表4:米国市場の収益は成長を続ける見通し>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年8月4日)

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