米長期金利は経済成長率のピーク越えを示唆?

 一方、高値圏で推移する米国株も「成長率減速」に直面する可能性を否定できません。

 実際、先週発表された第2Qの実質GDP成長率は+6.5%(前期比年率)と市場予想平均を下回り、今週発表された7月のISM製造業景気指数も前月より低下。「リベンジ景気」とも呼ばれる経済正常化のモメンタム(勢い)が鈍化していくとの観測も出てきています。

 図表2は、NY連銀が週次で発表している「全米経済活動指数」(NY FED. Weekly Economic Index)と米長期金利の推移を示したものです。コロナ危機を受けて2020年央に低下した長期金利(10年国債利回り)は、景気回復期待に沿って本年4月まで上昇しました。

 その後は、一時的なインフレ圧力やテーパリング(量的緩和の縮小)観測を織り込むかのように安定傾向となっています。今週も長期金利は上下しながらも1.1%台で推移しています(4日)。グロース株に影響を与えがちな長期金利の低位安定は株式の下支え要因と言えるでしょう。

<図表2:米国経済の成長率はピークを越したのか>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年初~2021年8月4日)

 ただ、米国株(例:S&P500指数)は昨年11月以降「強気相場」を続け、直近高値から5%を上回る下落を経験せずにサマーラリー(7月の株高)に至りました。過去30年(1991~2020年)におけるS&P500指数の月間騰落率を平均して振り返ると、夏秋に米国株が調整しやすかったアノマリー(季節性)がみられますので留意は必要です。

 一時的にせよ株価調整のきっかけとなりそうなリスク要因としては、
(1)デルタ型変異株の影響による感染再拡大と先行き景況感の鈍化
(2)FRBによるテーパリング観測や長期金利の再上昇
(3)公的債務上限問題やデフォルト(米国債の債務不履行)リスク浮上

などが挙げられます。

 ただ、金利とファンダメンタルズ(業績見通し)の基調やバランスが大きく崩れない限り、「夏秋の株安は投資の好機となりやすかった」との経験則に沿った相場展開を期待しています。