まだ弱い米国の雇用。低金利は長期化か

 パウエル議長は2月10日の講演で「コロナ禍で労働市場の回復は遅れており、最大雇用に達するまでゼロ金利政策を維持する」と明言しました。また、「当面は2%を上回る物価上昇率を目指す」と述べ、緩やかなインフレを容認する姿勢も確認しました。

 同議長は、「直近の失業率は(実質的には)10%に近い」と指摘し、サービス業を中心に雇用情勢が脆弱(ぜいじゃく)である現状を懸念しています。

 図表4は、米国雇用統計の「非農業雇用者総数」と「失業率」の推移を示したものです。コロナ危機後に失業率は14.8%(昨年4月)から6.3%(本年1月)まで低下しましたが、労働参加率も低下していることに注意を要します。

 コロナ禍で「職探し」を諦めた米国人がいまだ多数存在し、潜在的失業率が高いということです。コロナ危機前と比べていまだに約1,000万人失われている雇用者数を憂慮し、パウエル議長は「雇用の最大化まで現在の金融政策を続ける」と述べ、金融緩和の長期化を示唆しています。

 FRBは最大雇用の目安となる失業率を4.1%と試算しており、その達成は2023年までずれ込むとみられています。雇用回復を優先する姿勢が変わらない限り、短期金利は実質ゼロで据え置かれる可能性が高いと考えられます。

 同議長は、雇用重視の財政出動を訴えるイエレン財務長官に同調し、金融当局と政府が雇用回復を急ぎながら市場の金融引き締め観測や財政悪化懸念を抑制しようとしているかのようです。

 こうした政策姿勢は「高圧経済(High-pressure economy)」とも呼ばれます。低金利政策の長期化を想定しても、米長期金利が年後半に1.5~2.0%程度に上昇する可能性はありそうです。

 短期的に株価が調整する場面はあっても、長期金利の上昇ペースが緩やかにとどまれば、業績相場入りを鮮明にする米国株式の堅調トレンドは下支えされていくと考えています。

<図表4:FRBは「コロナ前にほど遠い雇用情勢」を憂慮>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2007年1月~2021年1月)

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