“環境・緩和・投機”の複合相場が続けば、1,450ドルも射程範囲に入るか

 ここからは、中期的に底流するプラチナ相場の上昇要因について考えます。この点は、まさに先週の「コロナ禍で金(ゴールド)が自我に目覚める!?貴金属市場の定石と定石外とは!?」で述べた点でもあります。

図:コロナ禍における、金融緩和と脱炭素ブームが与える貴金属市場への影響

出所:筆者作成

 先述の、[中期]の上昇要因で挙げたものの中で、金融緩和起因の株高による景気回復期待増幅、“脱炭素”ブームによる新需要拡大期待、の2点を、上図で説明しています。

 金融緩和は、カネ余り拡大→景気回復期待増→株式上昇要因発生、という経路で、消費のおよそ70%を産業用の用途で占めるプラチナの価格上昇要因になり得ます。また、金融緩和は金(ゴールド)の上昇要因にもなり得るため、貴金属のグループの代表格である金が上昇→つられてプラチナも上昇、という経路も想定されます。このため、金融緩和は、株高経路と、金高経路の2つの経路でプラチナ価格の上昇要因になり得ます。

 また、“脱炭素”がさらにブーム化したり、ブームが実態に変貌を遂げたりした場合、プラチナに、当該要素起因の新しい需要が生まれる可能性があります。

 プラチナは、化石燃料の代替エネルギーとして注目されている“水素”を生成する装置、水素をエネルギー源とし、空気中の酸素を取り込んで電気を発生させ、その電気でモーターを回転させて走る燃料電池車の発電装置の電極部分、空気中の二酸化炭素と水素を結合させて作る合成液体燃料の精製装置などに使われています。

“脱炭素”ブームに乗り、これらの分野が本格的に稼働し始めれば、プラチナに新しい需要をもたらすと、考えられます。“脱炭素”は、世界規模の、息の長い、超重要テーマであるため、とん挫したり、方針転換したりする可能性は低いとみられます。

 金融緩和が行われている点も、“脱炭素”がブーム化した点も、もともとは、新型コロナの感染拡大が起きたことと関わっていると、筆者は考えています。

 この意味では、新型コロナの感染拡大が鎮静化するまでは、金融緩和は続き、“脱炭素”のブーム化はさらに続く可能性があります。この点は、プラチナの中期はおろか、長期的な需要増加、つまり、価格の下支え要因として作用すると考えられます。

 今回は、先週のプラチナ価格の急騰の背景と、今後の価格動向について、短期および中期の材料から考えました。

 仮に、投機の象徴とも言えるビットコインがなお、騰勢を強め、かつ、ジャンルを横断した多数の主要銘柄が上昇する“リスク・オン”が続けば、以前のレポート「2021年のプラチナ6大予測:新しい上昇要因で1,300ドル程度まで上昇!?」で述べた、2021年の目標価格、1トロイオンスあたり1,300ドルを、短期的に上回る可能性があると、みています。

 また、1,300ドルを達成し、その後反落したとしても、中期的な下支えが底流していることから、下げ幅は限定的となり、再び上値をトライする展開になると、考えています。株高・金高、脱炭素ブームがさらに過熱化すれば、中長期的には、2014年7月の水準である1,450ドル近辺をうかがう可能性もあるとみています。

 また、前回述べたとおり、貴金属4銘柄は、コロナ禍をきっかけに自我に目覚める(それぞれの変動要因でそれぞれの値動きを演じる)可能性があります。このため、次第に、金(ゴールド)とプラチナの価格差など、従来の手法が通用しにくくなることが予想されます。まずは、関連する材料を、短期や中長期など作用する時間軸ごとに分け、材料を俯瞰した上で、今後の動向を考えるようにするとよいと思います。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品

純金積立

金(プラチナ、銀もあり)

国内ETF/ETN

1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN

海外ETF

GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF

投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド

外国株

ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ

国内商品先物

金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム

海外商品先物

金、ミニ金、マイクロ金(銀、ミニ銀もあり)