国内市場(東証)の時価総額増減でもみられる「デジタルシフト」

 同じ尺度で国内株式市場の動向もみてみましょう。TOPIX(東証株価指数)は、東証第1部に上場される全企業(約2,160銘柄)で構成される時価総額加重平均指数です。

 図表3は、TOPIX全体の時価総額と主力大型銘柄(時価総額上位20銘柄)の時価総額の年初来変動幅を示したものです。米国市場ほどではありませんが、上述したデジタルシフトに伴う変化がみられます。TOPIXの時価総額は年初来で約68兆円減少しました(7月1日時点)。

 こうした中、自動車、通信大手、銀行などが時価総額を減らした一方、IT、FA、医薬関連などのウエイトが増えたことがわかります。

 SBG(ソフトバンクグループ)は、AI分野を中心とするデジタル情報分野で多くの企業(上場企業・未上場企業)に投資する「戦略的持株会社」となっていますが、市場が波乱含みとなったなか負債額の大きさが一時不安視されました。その後、保有株式の一部を売却して保守的な財務戦略に転じ、巨額な自社株買いを発表・実施したことや、ナスダック相場の高値更新でデジタル分野における成長期待を取り戻しつつあります。

 その他、FA向けセンサー分野で世界最大手のキーエンス、任天堂、信越化学なども時価総額を増やしています。なお、一覧表に表示されていない東京エレクトロンが「21位」に順位を上げており、米国市場に似たデジタルシフトを映す物色が進んでいるようにみえます。

「ウィズコロナ」(新型コロナウイルスとの共存)が続く中、デジタルシフトの進展を映して「市場内での存在感」(時価総額ウエイト)を高めていくと考えられるセクターや銘柄に注目したいと思います。


<図表3>東証の時価総額変化でも「デジタルシフト」が鮮明に

*TOPIXの上位20銘柄(時価総額の降順)について「時価総額の年初来増減」を示したものです。 *上記は参考情報であり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。
出所:Bloombergをもとに楽天証券経済研究所作成(2020年7月1日)

著者おすすめのバックナンバー
2020年6月26日:米国株に3つのリスク。感染「第2波」が景気回復期待に打撃
2020年6月19日:MMT期待vs感染第2波不安:世界株の行方は?
2020年6月12日:米ナスダック最高値更新と反落リスク。トランプ大統領の再選失敗は要警戒?