米国市場の時価総額増減が鮮明にする「デジタルシフト」

 本年は2月下旬から3月下旬にかけ日米株式は急落。その後の反発を経て、今週も比較的底堅い動きとなっています。ただ、株式市場の物色(業種や個別銘柄の選好)はコロナ禍で偏りも鮮明にしています。

 図表2は、S&P500指数を構成する時価総額上位20銘柄(S&P500指数の時価総額で約4割を占める)の中で、時価総額が年初来で増えた銘柄を「青色」で一覧したものです。

 時価総額(株価×発行済株式数)は、上場企業が主力とする事業(ビジネス)の成長性、収益性、経済全体への貢献を集約し「長期の視点に立った企業価値の成長」を反映するとされます。増資などで発行済株式数が増加しない限り、株価の上下が時価総額の増減を左右します。

 こうした中、米国市場で時価総額が相対的に増加している企業群の共通点は「デジタルシフト」とも呼べそうです。コロナ禍を契機に企業や個人のIT化が加速するとの観測がIT関連株の時価総額を増加させているとも言えます。

<図表2>米国市場の時価総額変化は「デジタルシフト」を鮮明に

*S&P500種数の上位20銘柄(時価総額の降順)について「時価総額の年初来増減」を示したものです。 出所:Bloombergをもとに楽天証券経済研究所作成(2020年7月1日)

 デジタルシフトとは、IT化が進む社会や経済でライフスタイル、企業経営(ビジネスモデル)、教育、医療(診療)などあらゆる分野でデジタル対応が加速する現象を言います。

 上記一覧で時価総額を伸ばしている企業には、社会的距離戦略を余儀なくされる中、EC(ネット通販)、クラウドコンピューティング、WHF(リモートワーク)、オンライン教育、オンライン診療、オンラインエンタメ(映画・音楽・ゲーム)など「新しい日常(ニューノーマル)」を支える基幹技術やプラットフォームを成長の原動力にしている銘柄が多いことがわかります。

 時価総額の最上位を占める「GAFAM」(大手IT関連銘柄)に加え、EC需要拡大で恩恵を受けるビザ、マスターカードが時価総額を増やしています。

 ウォルマートやホームデポは対面型小売り企業でありながら、米当局より「国民に必要不可欠な店舗」とみなされて営業を継続し、ECにも積極進出してきた企業です。IT分野のエヌビディア、ネットフリックス、アドビなども時価総額を増やしています(S&P500指数の時価総額は年初来で減少)。

 これら企業は、コロナ禍が続くなかでも「IoT、AI、5Gの普及に伴い株主価値が増えていく」と市場が期待している企業群と言えるでしょう。