「経済悲惨度指数」の急上昇でトランプ再選に黄色信号

 三つ目に、トランプ大統領再選に「黄色信号」がともっていることも潜在的な波乱要因です。図表4は、米国の「経済悲惨度指数」と株価(S&P500指数)の推移を示したものです。

 経済悲惨度指数(Economic Misery Index)とは、失業率とインフレ率の絶対値を足した指数です。経済悲惨度指数の低下は「与党政権に追い風」とされ、逆に同指数の上昇は米国民(有権者)の生活苦や不満を象徴。「大統領選挙年に経済悲惨度指数が上昇あるいは高水準だと現職大統領の再選に不利」と言われてきました。

 実際、過去50年の間に「再選に失敗した大統領」は、1980年のカーター大統領と1992年のブッシュ(父)大統領のみで、どちらも経済悲惨度指数が10以上に上昇あるいは高水準だったことが分かります。年初にトランプ大統領の再選予想確率が上昇したのは、「ファンダメンタルズに恵まれ株価も上昇していたから」との見方もあります。

 米国株価が最近反発しても、経済悲惨度指数は失業率の急上昇を受け16.4%に急上昇しました(4月時点)。11月3日の大統領選挙に向け、新型コロナの感染再拡大(第2波)も支持率や当選確率に影響しそうです。

<図表4>経済悲惨度の急上昇でトランプ大統領の再選に黄色信号

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1970年1月~2020年4月)

 実際、トランプ大統領の支持率(Real Clear Politicsの世論調査平均)や当選予想確率( U.S.PredictIt)はコロナ危機に伴う景気悪化で低下しており、民主党候補(7月の民主党大会で指名される見通し)のバイデン候補(元副大統領)に対し劣勢となっています。

 コロナ危機は直接的にトランプ大統領の責任ではありませんが、3月に米国で感染が広まり始めた際に「トランプ大統領が楽観過ぎて政策面の初動が遅れた」との批判は強く、野党(民主党)とバイデン候補はトランプ再選を阻止する材料にしています。

 民主党政権(バイデン大統領)誕生でも米国経済の長期的趨勢が大きく変化することはないと考えています。ただ、メインシナリオとして「トランプ再選」を想定していた投資家には「リスクシナリオ」(短期的にせよ不安定要因)となるでしょう。

 一般的に、「共和党政権の方が民主党政権と比較してビジネスフレンドリー(減税や規制緩和に前向き)」とみなされてきた面があるからです。こうして、今夏にワシントン情勢を巡る不確実性が「第2波」に直面すると、市場のボラティリティ(変動)見通しが高まり株価が乱高下する可能性があり注意が必要です。

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