株式市場の堅調持続を阻みかねない「3つの第2波」

 市場が警戒する一つ目の不安要因として、ロックダウン解除(緩和)をきっかけとするウイルス感染拡大の「第2波」が挙げられます。米国の感染者(累計)は約169万人に達し世界最悪となっています。

 図表2が示すように、「7日前比の感染者増加数」は低下傾向で、全米50州(+ワシントンDC)が「政治決断」として感染抑制から経済活動回復に政策の軸足を移しました。ただ、米国の感染者のうちの死亡者数はついに10万人を突破しました(27日)。

 そして現在、外出禁止や外出自粛の緩和で米国人の移動が増え、新規感者が再び増加するリスクが浮上しています。治療薬やワクチンの開発を巡る報道は市場の動意材料とはなっても、感染者増加の抑制や重症患者への効果はいまだ不確実です。

 ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)面で「景気後退は第2Qに終わる」とのメインシナリオを市場は織り込んできましたが、感染者数が再拡大する「第2波」に直面する事態となれば、「再自粛」(再度のロックダウン)とその経済的影響を視野に入れた戻り売りが広まり、市場のセンチメント(投資家心理)が一転して悪化する可能性があり注意が必要です。

<図表2>新型コロナウイルスの感染拡大に「第2波」はあるのか

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年3月2日~5月27日)

 実際、米国では経済活動再開で人出が増えており、カリフォルニア州、バージニア州、ノースカロライナ州など複数の州で新規感染者数が再び増加したと報道されています。特に先週末からメモリアルデー(25日)までの連休中、各地のビーチやイベント会場は多くの人で賑わいました。州政府はマスクの着用や対人距離の確保を求めていますが、従わない人の姿も目立つとのことです。

 フロリダ州のビーチでは街に繰り出した人々で大通りが密集状態となり、マスク非着用の違反者が多すぎて警察では対応が困難と報道されました。連休から14日程度経過した時点での感染動向が不安視されるところです。

 二つ目の「第2波」は、「米中対立の再激化」です。22日から開催された中国・全人代(全国人民代表大会)は、「香港国家安全法」(香港市民の自由と権利を制限する法律)の早期施行を目指すことを表明しました。香港は、1997年に英国統治下から中国に返還された当時「一国二制度を50年間担保する」とされ、同制度は今後も27年続く予定でした。

 世界がコロナ危機に見舞われている間に、中国共産党政府が香港の民主化運動を抑え込む強硬姿勢に打って出た感があります。香港では先週末に激しい抗議デモが起き、香港警察が武力で抑え込んだ結果200人以上が逮捕される事態となりました。

 図表3は香港ハンセン指数の推移を示しており、下押し圧力が鮮明となっています。中国の強権的姿勢に米国の政府・議会は反発を強めており、トランプ大統領は中国に対し経済的・金融的な制裁措置を実施する姿勢を示しています。こうした米国側の動きに対し、中国は「内政干渉で報復措置をも辞さない」と表明し対決姿勢を強めています。

<図表3>「香港国家安全法」を巡り米中対立が再び激化する可能性

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019年7月初~2020年5月27日)

  中国政府が成立を目指す「香港国家安全法」は、「香港から民主化の波が押し寄せてくる」との不安の裏返しとも言えそうです。アジアの「国際金融センター」と呼ばれる香港情勢の混乱次第では、香港市民を支持する米国と中国の対立が昨年不安視された「貿易摩擦」が地政学的危機に発展するリスクもはらんでいます。

 中国は、台湾のWHO(世界保健機関)加盟やオブザーバー参加に反対し、米国など民主主義先進国と対立を深めています。昨年秋に合意した「米中通商合意」に影響を与える可能性も浮上しており、サプライチェーンの棄損を介して中国事業を展開する企業の業績に新たな不安材料となりえます。米中対立の再激化(第2波)は、世界株式を反落させる顕在的リスクとして要注意です。