アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2024年10月31日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。▲はマイナス。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。

 10月31日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

 なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。

衆院選への警戒感から月後半にかけては伸び悩む場面も

 10月(9月30日終値~10月31日終値まで)の日経平均株価(225種)は3.1%の上昇となりました。

 月の半ばにかけて上昇し、10月15日には7月19日以来となる4万円台乗せを一時達成しました。石破茂総理の「独自色」後退に伴って、増税や金融政策に対する過度な警戒感が後退したほか、米国の利下げペースの鈍化観測によるドル高円安の進行、中国の景気対策への期待感などが買い材料視されました。

 ただ、その後は軟化して3万8,000円割れ水準にまで調整しました。オランダの半導体製造装置メーカー大手であるASMLホールディング(ASML)決算がネガティブサプライズとなり、半導体関連株を中心に売りが優勢となりました。また、衆議院選挙における自公過半数割れが意識され、政局不安も強まる形となりました。

 なお、選挙は市場の想定通りの結果となりましたが、その後はあく抜け感に加えて、財政拡張期待なども高まることとなり、月末にかけて下げ渋ってきています。

 こうした中、ランキングTOP15銘柄の株価は総じてやや売り優勢の展開となっています。値下がりは11銘柄、値上がりは4銘柄となっています。9月中間期末を通過したタイミングでもあり、高配当利回り銘柄は相対的に買い妙味が強まらなかった格好のようです。

 相対的に上げが目立ったのは商船三井(9104)で、月末にかけて、業績上方修正や増配、高水準の自社株買い発表が材料視されました。一方、下げが大きかったのは双日(2768)で、上半期の減益決算がマイナス視されました。UTグループ(2146)などは、米長期金利上昇によるグロース株安の流れが重しとなる場面がありました。

商船三井はコンセンサス水準まで配当計画が引き上げられる

 今回、新規にランクインしたのは、インフロニア・ホールディングス(5076)、双日(2768)、SANKYO(6417)オカムラ(7994)三ツ星ベルト(5192)の5銘柄で、除外となったのは、JT(日本たばこ産業)(2914)マネックスグループ(8698)武田薬品工業(4502)FPG(7148)いすゞ自動車(7202)となっています。

 インフロニア・HDは3月以降、株価の下落基調が続いており、大きくランクアップする形となりました。双日も上半期決算マイナス視の株価下落で利回りが上昇しています。他の3銘柄は株価下落で相対的に利回り水準が高まる形となっています。

 一方、JTはコンセンサスレーティングが基準未達となって除外されています。その他4銘柄は、それぞれ前月に新規ランクインした銘柄ですが、そろって9月は株価がプラスパフォーマンスとなったことで、相対的な利回りが低下することとなっています。

 なお、マネックスグループに関しては、特別配当実施が好感されて株価が大きく上昇しましたが、今後は配当コンセンサスが大きく切り上がる余地が大きいです。

 アナリストコンセンサスが会社計画の配当予想を上回っている銘柄としては、TOYO TIRE(5105)、SANKYO(6417)が挙げられます。会社計画ベースでの配当利回りはTOYO TIREが4.80%、SANKYOが3.92%となっています。

 TOYO TIREは直近決算発表時に通期予想を上方修正しており、会社計画の配当金が引き上がる可能性は高いでしょう。SANKYOに関しては、第1四半期決算を見る限り、コンセンサス予想が高すぎる印象です。なお、商船三井(9104)はコンセンサス水準並みにまで、会社側の配当計画が引き上げられました。

 一方、コンセンサス水準が会社計画を下回っているものは、UTグループ(2146)、JFEホールディングス(5411)日本製鉄(5401)、インフロニア・HD(5076)などです。会社計画ベースでは、UTグループが6.29%、JFEHDが5.95%、日本製鉄が5.02%、インフロニア・HDが5.22%となっています。

 日本製鉄は会社側が業績予想を上方修正しており、コンセンサス水準が切り上がっていく可能性は高いでしょう。インフロニア・HDに関しても、政策保有株の売却が進むとみられることで、会社計画が妥当と考えられます。一方、UTグループ、JFEHDなどは足元の決算状況から、コンセンサス水準が妥当と考えられます。

 SBIホールディングス(8473)は配当予想を発表していません。コンセンサスでは176円程度の年間配当(2024年3月期は160円)が予想されています。

トランプ氏復権でも不透明感は強まる余地が大きい

 株式市場にとっても、目先の最大の焦点となるのは米大統領選挙となるでしょう。トランプ氏がやや優勢とはみられており、足元では市場への織り込みも徐々に進みつつある情勢といえます。トランプ氏勝利の場合は、共和党が上院も下院も制する「トリプルレッド」となる公算が大きく、短期的には減税策への期待などで株価がもう一段上昇する可能性は高そうです。

 一方、「トランプリスク」も多く、買い一巡後はすぐに不透明感も強まりやすくなるとみられます。

 まずは関税政策であり、とりわけ、中国は関税率次第で一段の景気鈍化が想定されることになるでしょう。世界的な景気不安につながりかねないほか、半導体産業へのネガティブな影響も警戒されることになります。長期金利も一段の上昇が想定されるため、米国の利下げペース鈍化なども意識されてくるでしょう。

 全体相場には不透明感が強まりやすそうですが、相対的に高配当利回り銘柄に関しては、年明け後のNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)資金流入を想定して底堅い動きが期待できます。高配当利回り銘柄の多いセクターでいえば、今後も予算の拡充が見込まれてきそうな防衛関連、「地方創生」政策で活躍余地が広がる可能性の高い地方銀行株など妙味と判断します。