「月またぎ」で11月相場を迎えた先週の株式市場ですが、週末11月1日(金)の日経平均株価終値は3万8,053円となりました。前週末終値(3万7,913円)からは140円の小幅高だったほか、週間ベースでも3週ぶりの上昇に転じています。

 単純な週末終値どうしの比較では堅調な株価推移にも思えますが、週間の値幅(高値と安値の差)は1,659円と意外と大きく、値動きが荒かったことが分かります。

 そんな中で迎える今週は、国内では主要企業の決算が相次ぐため、個別物色を中心とした展開が予想されますが、それ以上に重要なのは市場のムードの方で、そのカギは米国株市場が握っています。

 とりわけ焦点になるのは、「米雇用統計(10月分)後の反応」、「米大統領選挙の行方」、そして「FOMC(米連邦公開市場委員会)」になります。

 そこで今回は、すでに結果が公表された米雇用統計に対する米国市場の初期反応を整理するのと同時に、テクニカル分析的に見た日本株の今後のシナリオについて考えて行きたいと思います。

先週の日経平均は「値動きは荒いが方向感に欠ける」展開

 まずはいつものように、足元の日経平均の状況から確認して行きます。

図1 日経平均(日足)の動き(2024年11月1日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 先週の日経平均の値動きですが、上の図1の日足チャートで見ても分かるように、週の前半は株価が反発していたものの、週末にかけて下落に転じる展開となりました。

 前週末の衆議院選挙の結果をはじめ、企業決算でもハイテク株などで明暗が分かれたこと、日銀金融政策決定会合後に利上げ観測が浮上したこと、そして、冒頭でも触れた米国のイベント(雇用統計・大統領選挙・FOMC)や国内の連休を前にした手仕舞いなどを織り込みつつ、これまでのレポートでも指摘していた、9月27日高値と30日安値の範囲(レンジ)内で株価が推移していった格好です。

「値動きが荒い割に方向感に欠ける」展開だったわけですが、テクニカル分析的には、株価が3万8,000円台水準を維持しつつ、移動平均線を意識した値動きなどが下値を支えそうな一方、前回のレポートでも指摘したように、現在の株価が「上昇ウェッジ」を下抜けてしまっているため、上値を試すにも積極的になれるような材料が欲しいところです。

 そのため、米国のイベントをきっかけに、「現在のレンジを脱する可能性があるのか?」、「その場合に相場は上と下のどちらに向かいそうなのか?」がポイントになります。

 米大統領選挙については、現地5日(火)から投開票が実施され、その動向など関連するニュースは、日本時間の6日(水)朝方から消化され始めることになりますが、結果が確定するまでに時間が掛かる可能性も考えられます。さらに、7日(木)にはFOMCの結果が公表されるというスケジュール感でもあるため、相場が本格的に動き出すのは週末近くになるかもしれません。

米雇用統計の結果と市場の初期反応は?

 となると、目先の株式市場の値動きは、先週末1日(金)に公表された米10月雇用統計の結果と、市場の初期反応を確認して行く必要があります。

図2 直近数回の米雇用統計の状況 ※印は修正前の数値

出所:各種報道等を基に筆者作成

 今回の雇用統計の結果の概要については、上の図2の「10月分」のところでも確認できるように、非農業部門雇用者数が前月比で1.2万人増、失業率が4.1%、前年比の平均時給が4.0%増となりました。

 それぞれの市場予想は、非農業部門雇用者数が11.3万人増、失業率が4.1%、平均時給が4.0%増でしたので、非農業部門雇用者数以外はほぼ予想通りの結果でした。

 確かに、今回の非農業部門雇用者数は「サプライズ」と呼べるほど市場予想を下回りましたが、これは大型ハリケーンの被害や大規模なストライキによるもので、一時的な落ち込みという見方もあります。

 しかしながら、今回の公表では過去分(9月分と8月分)の非農業部門雇用者数が下方修正されており、全体的にやや弱い内容だったと言えます。

 これに対する1日(金)の米主要株価指数を見ると、NYダウが前日比で288ドル(0.69%)高、S&P500が23p(0.41%)高、ナスダックが144p(0.80%)高といった具合に、上昇で取引を終えています。

 このように、今回の雇用統計の結果を受けた米国株市場の初期反応は良好だった印象ですが、注意しておくべき点もあります。

 そのひとつは、「経済指標の結果に対する市場の受け止め方」です。

 過去3回の雇用統計の結果を受けた米株市場の反応を振り返ると、弱い結果だった7月分(8月公表)と8月分(9月公表)は株安となり、持ち直す結果となった9月分(10月公表)は株高となりました。つまり、株式市場は景況感の強弱に素直に反応していたわけです。

 これに対し、今回の10月分(11月公表)については、弱い結果だったにも係わらず、株式市場は上昇で反応しています。同日に発表されたISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況指数とともに、冴えない経済指標の結果を受けて、金融政策の利下げ期待が高まったことが影響していると思われます。

 9月半ばに開催されたFOMCでは0.5%の利下げが決定されましたが、以降の経済指標は米景気の強さを示す結果が相次ぎ、こうした「強過ぎる」米国の景況感が金利の高止まりにつながって、株式市場の重石となることも考えられ、一部では「今後の利下げペースが鈍化するのでは」という観測も出ていました。

 それだけに、景況感と金利の関係による株式市場の受け止め方が変化しつつある点は意識しておいた方が良いかもしれません。

金利の動きには米大統領選への思惑も絡む

 そして、もうひとつの注意点は、「足元の金利の動きに米大統領選挙への思惑が絡んでいる」ことです。

図3 米10年債利回りの1分足の推移(2024年11月1日)

出所:楽天証券WEBサイトより筆者作成

 上の図3は、先週末11月1日(金)の米10年債利回りの1分足チャートです。

 米雇用統計が公表されたのは、現地時間の8時30分ですが、結果を受けた米10年債利回りが大きく低下していったことが分かります。ただ、しばらくして上昇基調へと転じ、結局、雇用統計が公表される直前の利回りを超えています。

 先ほども見てきたように、弱い経済指標の結果を受けて10年債利回りが下落したものの、間近に迫る米大統領選を前にして、警戒感による債券売りが出たものと思われます。

 市場では、先週あたりから「米大統領選挙戦でトランプ候補が勝利」というシナリオを見越した動きが見られ、トランプ候補の掲げる政策(関税引き上げや移民対策など)が米国のインフレ圧力を高めるのではという思惑から金利の上昇が目立っており、この日もその流れが継続した格好です。

図4 米NYダウの1分足の推移(2024年11月1日)

出所:楽天証券WEBサイトより筆者作成

 また、上の図4は、図3と同じ11月1日(金)の米NYダウ(1分足)の動きです。

 雇用統計の結果を受け、取引開始からのNYダウは上昇基調を辿っていましたが、米10年債利回りが雇用統計前の水準を超えてきたあたりから株価の上値が重たくなり、さらに利回りが上昇して行くのに伴って売りに押され、上昇幅を縮小させていった様子がうかがえます。

 したがって、米国の金利動向については、景況感をウォッチするだけでなく、今週の米大統領選やFOMCの結果を受けて、いったんの材料出尽くしで利回りが下がって株価が上昇していくのか、それとも、利回りの上昇基調が継続して株価の重石となるのかについても見極めていくことになり、今後の展開が読みにくくなっています。