FRBのバランスシート拡大が演出するメルトアップ相場

 2019年に上昇ラリーを記録した米国株であるが、ここまでのところイラン情勢の悪化もなんのその、2020年も上昇基調が続いている。果たしてこの強気相場は2020年にどう展開していくのだろうか。まずはFRB(米連邦準備制度理事会)のバランスシートの拡大から、強気相場の賞味期限を探ってみよう。

 ゼロヘッジの記事「Morgan Stanley Sees Melt-Up Lasting Until April, After Which Markets Will "Confront World With No Fed Support"(モルガンスタンレーは、相場の上昇は4月まで続き、その後、市場は「FRBのサポートがない世界に直面」するだろうと見ている)」によると、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、今後数週間において何かしらの大きな変化がなければ、S&P500は3月3日までに3,333に達するという見通しを述べたという。

 また、モルガンスタンレーは、FRBによる「NOT QE」(QE:量的緩和)が少なくとも第2四半期まで続くとして、株価は4月か5月まで上昇すると予想している。

株価は4月か5月まで上昇する!?(モルガンスタンレー予想)
上段:S&P500の推移(週間)・下段:FRBのバランスシートの変化(週間)

出所:ゼロヘッジ

 上記グラフにあるように、その「NOT QE」が昨年10月に始まって以来、FRBのバランスシートはほぼ毎週増加しており、その動きと並行してS&P500は上昇している。11月中旬にバランスシートが減少した際には、S&P500も下落した。この相関関係を見れば、FRBのバランスシートが拡大している限りは、S&P500も上昇を続けることになりそうだ。では、「NOT QE」が切れる第3四半期以降はどうなっていくのか。前述の記事には以下の記載がある。

 2018年に経験したことだが、少なくとも20%の弱気市場は、FRBメンバー全員のタカ派感情を押しつぶすには十分すぎる。米国だけでなく世界中で完全な政策転換を強制する。これはトランプが市場の下落をFRBの過失として非難を強める選挙の年にはさらに顕著となる。結局のところ、経済は今や市場自体であり、ありふれた弱気市場は景気後退を確実にするが、過去10年間の中央銀行の過剰を一掃するような市場のクラッシュは世界最大の不況をもたらすだろう。そのような「市場イベント」は大きな社会的および政治的激変が起こらない限り起きないであろう。

 いまやFRBはシングル・マンデートに基づいて政策運営を行っていると言っても良いだろう。シングル・マンデート、つまりそれは『株価』である。特に大統領選挙を控えた今年、トランプ米大統領にとって株価は重要な生命線となる。第3四半期以降にもし株価が調整するような局面があれば、FRBに対するトランプ大統領からの圧力はさらに強くなるだろう。金融緩和をやめてしまえばどのような事態が待っているのか、チェックアウト出来ないことを一番よく知っているのは中央銀行自身なのである。