図表4:2020年のワシントン情勢(予想確率)を占う

(出所)U.S.PredictItのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(2019/11/6)

 本稿では、「民主党のウォーレン候補が大統領選に向けて優勢となる場合」に株式市場で相対される反応として、主な公約(政策提言)別に下記しました。具体的には、

(1)富裕層資産課税(資産5,000万ドル以上を対象に2%以上)=投資銀行を中心とする金融機関や高級消費財関連株に悪材料
(2)法人減税の廃止(平均税率21%→35%)=企業全般の純利益減少要因
(3)国防費の削減による歳出の捻出=防衛関連株に悪材料
(4)教育・雇用の機会均等と最低賃金の倍増=企業全般のコスト上昇要因
(5)国民皆保険制度の再建とヘルスケア費用削減=民間ヘルスケア企業に悪材料で薬価引き下げの可能性で薬品株に悪材料
(6)グラス・スティーガル法(金融規制)復活=投資銀行を中心とする金融機関に悪材料
(7)GAFAの独占を阻止するための企業分割提案=米メガテック企業に悪材料
(8)ドルを積極管理:輸出産業・雇用の保護=ドル高のメリットを得てきた多国籍企業に悪材料

 などが挙げられます。ウォーレン候補の公約は、「所得の再分配」に重点を置く「Progressive Liberal」(進歩的社会民主主義)と呼ばれ、富裕層や大企業に対する増税で得た財源を想定しています。「反・大企業」、「反・富裕層」、「反・ウォール街(株式市場)」との印象で市場心理の重石となりそうです。

 ただ、こうした社会主義的政策を選挙の行方を左右するとされる「中道層」が支持するか…。万が一、ウォーレン大統領が誕生した場合でも、議会の支持(特に共和党が過半を占める上院の承認)を得られるか否かは不確実です。

 11月20日には5回目の「大統領選民主党候補討論会」がジョージア州で実施される予定です。討論会での優勢・劣勢、支持率、当選確率の動向が注目されます。上記したリスクシナリオを念頭に置きながら新年相場を検討することが肝要となりそうです。

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