世界的な債務の膨張が危機を招くのか!?

 G・ソロスと設立した「クォンタム・ファンド」において10年で2,400パーセントのリターンを叩き出したジム・ロジャーズが『お金の流れで読む 日本と世界の未来──世界的投資家は予見する』
という本を出版した。筆者とはかなり相場観が異なる部分も多いが、非常に示唆に富むことを言っている。

「人と異なる考え方をすれば、ほかの人には見えないものが見えてくる。それが成功への第一歩だ。もし、周りから自分の考えをバカにされたり、笑われたりしたら、大チャンスだと考えればいい。人と同じことをして成功した人は、いままでいないのだから。そして最も重要なのは、韻を踏みながら変化を続ける時代の流れに合わせ、自分も変化できるようにしておくことである。時代がどう変遷しているかを肌で感じ、それに順応することだ。人は歳を重ねるごとに、変化に順応するのが難しくなる。しかし、あなたがたとえ40代ですでに仕事上の地位を確立していたとしても、変化を拒んでいればいずれ職を失うことになるだろう」(『お金の流れで読む 日本と世界の未来──世界的投資家は予見する』)と述べ、歴史を学ぶことの大切さを説いている。また、「待つことは時に行動するより大切だ」とも述べている。

 ジム・ロジャーズは日経新聞とのインタビューで、以下のような最新の相場観を語っている。

――世界的な債務の膨張が危機を招くと主張されています。現在の考えを教えてください。

「リーマン・ショックから10年が経つ。その間、米国経済は右肩上がりで成長してきたが、それもいつかは終わると考えるのが現実的だ」

「次の経済危機はリーマン・ショックを上回る史上最悪のものとなるだろう。08年以降、債務を膨らませすぎたためだ。米国の債務は数兆ドルという天文学的な規模だ」

「危機は静かに始まる。07年のアイスランドの金融危機はあまり注目されなかったが、アイルランドが続き、リーマン・ブラザーズが破綻したところで誰もがまずいと気づいた。危機は雪だるま式に大きくなるものだ。現在すでにラトビアやアルゼンチン、トルコで危機が始まっている」

――何が危機のきっかけになり得ますか。

「中国での想定外の企業や地方自治体などの破綻が火種となるだろう。中国ではこの5年、10年に債務が膨張した。足元では債務削減を進めているが、その影響で景気は減速し、世界経済も停滞に陥る」

――米中貿易摩擦の先行きをどう見ますか。

「3月1日に交渉期限を迎える貿易協議で、中国は農作物やエネルギーの米国からの輸入拡大策を打ち出すなど短期的な好材料が出てくるだろう。しかし、中長期的には世界の市場は弱くなるはずだ。中国経済の停滞や米中貿易摩擦の緊迫感は、移住先のシンガポールで感じている」

――FRB(米連邦準備理事会)は金融引き締めの抑制に転じました。危機を防ぐ効果はありますか。

「短期的にマネーの巡りをよくする効果はあるだろう。副作用が強く、正気ではない金融緩和に世界の中央銀行は手をつけるべきではなかった」

「(世界的に)金利は極端に低く、債務が膨張する状況はそう簡単には変わらない。仮に各国政府が債務削減へ歳出を減らせば、そうした動き自体が経済停滞を招いてしまう。足元で世界の株式相場は金利低下を受けて上昇しているが、いつまでも続くものではないと現実に気づくだろう」

――日本についてはどう見ていますか。

「日本株は7、8年保有してきたが、昨年秋に全て売った。株も通貨も、日本関連の資産は何も持っていない。人口減少という構造的な経済減速の要因に加え、日銀が大量のお金を刷り続け、日本株や国債を買い支えているのも売りの理由だ」

(日経新聞 2月24日 『ジム・ロジャーズ氏「経済危機の火種、中国に」 日本株、18年秋にすべて売却』)