ナスダックの時価総額上位銘柄の動き

 図表4は、ナスダック100指数の構成銘柄のうち、時価総額上位7社(時価総額が2,000億ドル以上)について、時価総額の降順に一覧したものです。

 最近の注目点は、アップルが時価総額世界首位の座をマイクロソフトに奪われたことです(11月28日時点)。アップルは時価総額で世界最高の1兆1,000億ドル(約125兆円)を10月に記録して以降、株価が下落。株価が比較的底堅かったマイクロソフト(時価総額:約8,588億ドル)に約8年ぶりに逆転されました。

 アップルは、主力製品であるiPhoneの販売伸び鈍化が懸念材料となっており、サービス部門の利益成長が全体の売り上げ、キャシュフロー、利益成長に寄与し続けるかが焦点となっています。

 一方のマイクロソフトは、クラウドコンピューティングやゲーム(Xbox)などの事業多角化での成功が相対的に評価されています。

 アマゾン・ドット・コムは、中核事業であるeコマース(オンライン通販)の成長に加え、マイクロソフトと同様にクラウド部門(AWS=Amazon Web Services)の成長が評価されています。アマゾンの予想PERは約61倍と高めですが、同社は本業(EC)で多額の営業キャッシュフローを稼いでも、そのまま新規投資(投資キャッシュフロー)に回すことで純利益(EPS:1株あたり利益)を少額しか出さないビジネスモデルが成長の原動力とみられています。

 フェイスブックは情報漏えい問題が不安視されて時価総額が減少しましたが、予想PERも低下しました。同社は10月、SNSのフェイスブック、インスタグラム、ワッツアップなど主要部門のユーザー数が総計で26億人を超えたと発表。将来に向けた資産増加(収益化のエンジン)に根強い期待があります。

 アルファベット(グーグルの持ち株会社)も株価が下落しましたが、第3Q(7~9月期)の決算発表では、売り上げもEPSも事前の市場予想を上回りました。

 中核である広告事業の収益拡大に加え、事業の多角化を進める中、「ウェイモ」が自動運転で技術面の世界的トップとして期待されています。ナスダックの上位銘柄は、短期的な事業の好・不調に伴い、今後も個別の時価総額(企業価値)ランキングが入れ替わる可能性はあります。ただ、デジタル革命が着実に進展する中、イノベーション(技術革新)の中核を担うナスダック上位銘柄の長期成長期待は総じて再評価される可能性があると考えています。

図表4:ナスダック上位7銘柄の騰落と予想PER(参考情報)

  シンボル 銘柄名 時価総額  3カ月前比騰落率 1年前比騰落率 予想PER 
1 MSFT マイクロソフト 858,837 0.8 30.9 25.0
2 AAPL アップル 858,632 ▲17.6 4.5 13.4
3 AMZN アマゾン・ドット・コム 820,367 ▲13.2 40.6 61.6
4 GOOG アルファベット 757,229 ▲11.8 3.7 19.9
5 FB フェイスブック 393,596 ▲22.4 ▲25.0 16.3
6 INTC インテル 222,997 0.6 9.2 10.9
7 CSCO シスコシステムズ 212,614 0.7 25.3 15.5
注:単位は、時価総額は百万ドル、騰落率は%、予想PERは倍。予想PER=Bloomberg集計によるアナリスト予想平均(市場予想平均)
注:上記は参考情報であり、個別銘柄への投資を推奨する目的のものではない
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年11月28日)

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