OPECプラスも世界分断の渦中にいる

 世界で「脱炭素」が進んでいる様子を見て、産油国は何を思ったでしょうか。(西側の)ぜいたくを実現するためにずっと協力してきたのに…西側が買わないのであれば、買ってくれる非西側に売ろう…不要であれば価格をいくら高くしても文句は言われないだろう…同じ境遇の産油国同士、結束を強めよう…などと考えていても、何らおかしくはありません。

 西側と非西側産油国の「脱炭素」に関する考え方の相違は、双方の溝を深めるきっかけとなりました。折しも、西側と非西側の分断が深まり始めた2010年ごろ以降、その流れに倣い、以下の通り、OPECプラスの自由民主主義指数も低下し始めました。自由度・民主度の低下を示す同指数の低下は、OPECプラスの考え方が、西側の考え方と離れてしまったことを示しています。

 OPECの資料によると、OPECプラスが協調減産を始めて間もないころ、OPECの要人が米国に行ってエネルギー関連の要人と面談をしたり(米エネルギー情報局や米商品先物取引員会に訪問した記録あり)、西側諸国が起源であるIEA(国際エネルギー機関)の要人と意見交換をしたりしていました。OPECの要人が、ハリケーンが襲来した米国南部の人々に哀悼の意を示した記録すらあります。

図:OPECプラスの自由民主主義指数(平均)

出所:V-Dem研究所のデータより筆者作成

 上図の太い赤い矢印は、わずかな期間でしたが、OPECプラスの自由民主主義指数が上昇し、考え方が西側に寄ったことを示唆しています。OPECプラスの要人が盛んに西側と関わりを持っていた時期と重なります。

 しかし今、同指数が低下したり、OPECプラスと西側との関係が疎遠になったりしています。最近のOPEC月報に記載されている世界の石油需要の見通しとIEAの同見通しに食い違いが目立っていることや、2022年3月にOPECプラスの原油生産量を評価する際に用いるデータを、IEAから民間2社に変更したことなどは、その一端であると言えます。