東南アジア工場のコスト増は許容レベル、受注回復で粗利益率改善へ

現地コード 銘柄名
02313

申洲国際集団控股

(シェンジョウ・インターナショナル)

株価 情報種類

84.40HKD
(6/20現在)

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 OEM(相手先ブランドの製造受託)生産を主力とする中国のニット衣料最大手、申洲国際集団にとっては、取引先ブランドからの受注動向が常に焦点となるが、2024年下期にはほかに、東南アジアでの生産業務を取り巻く環境に、投資家の目が向く可能性がある。BOCIによれば、特に関連性が深い出来事はベトナムの最低賃金引き上げ(7月1日付)。ただ、同社の現地工場の賃金水準はもともと高めの水準にあり、マイナス影響は許容範囲にとどまる見通しという。また、同社の強力な製造技術が利益率の改善に寄与し、受注の回復に伴う営業レバレッジ効果が今後の利益成長をけん引する見込み。BOCIは目標株価を引き上げ、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

 カンボジアは1月1日付で、縫製・繊維・履物業界の最低賃金を月額200米ドルから204米ドルへ2%引き上げたが、これに続き、ベトナムが7月1日付で、最低賃金を6%引き上げる。ベトナムとカンボジアにおける同社の従業員数は各3万2,050人、2万2,600人と、2023年の総従業員数の35%、23%に当たる数字。このため、特にベトナムの6%の賃上げは一定のコスト圧力につながる可能性が高い。ただ、BOCIは、マイナス影響は許容範囲にとどまるとの見方。同社がすでに市場平均を上回る賃金を設定していることや、従業員の72%が契約スタッフであること(賃金再交渉までにタイムラグがある)、人件費の増大分を一定程度、顧客に転嫁できることが理由という。

 ベトナムはまた、1月1日付で多国籍企業の法人税率を15%に引き上げ、OECD(経済協力開発機構)の枠組みに基づく基準に合わせた。従来の5%からの大幅な引き上げとなるが、BOCIによれば、この影響も許容範囲にとどまる見込み。新税率の対象が「年商20兆ドン(約7億9,000万米ドル)を超える事業体」で、同社傘下の事業体は一部該当しない。ベトナム当局が過渡期に税還付や減税を含む柔軟な対策を採る可能性もある。

 今後は受注回復を受けた営業レバレッジが注目ポイント。2021年以前に30%超の水準にあった粗利益率の回復が利益成長のカギを握るが、例えばアディダスなどの主要顧客が中華圏市場での販売見通しを楽観しており、BOCIは高利益率の回復に対して強気。強力かつ柔軟な生産力を強みに、2024年に新規顧客を獲得する可能性もあるとしている。

 BOCIは台湾の同業他社の業務統計を参考に、受注の一段の改善を見込み、2024-26年の予想EPS(1株当たり利益)を1%、4%、5%増額修正した。特に中国国内では設備稼働率が上向き、粗利益率が改善するとの見方。2025年予想PER(株価収益率)22倍をあてはめて(2024年予想22倍から変更)、目標株価を引き上げた。垂直統合型のビジネスモデルと研究開発力を高く評価し、長期の持続的成長と市場シェアの拡大を見込む。一方、レーティング面の潜在リスク要因としては、主要顧客による需要減や新規設備の立ち上げの遅れ、予想以上の人件費高騰、為替変動、政治的リスク、税率引き上げの可能性を挙げている。