REITは、「株」と「債券」の中間的性格を持つ

 J-REITは、円建てで、平均分配金利回りが4%前後と、利回り投資商品として魅力的です。長期(10年)国債の利回りが0.5%程度しかない時代に、魅力的な利回りです。国内債券の代替として、投資したいと思う人もいるでしょう。

 ただし、注意が必要です。REITは確定利回り商品ではありません。業績が悪化すれば分配金が引き下げられ、利回りが下がるだけでなく価格も下がるリスクもあります。その意味では「株」に近い商品です。

 リスク管理上、J-REITは、「日本株」と「国内債券」の中間的運用商品として扱ったら良いと、私は考えています。

 資産形成のためのアセット・アロケーションを、「国内株式25%、国内債券25%、外国株式25%、外国債券25%」としている投資家が、J-REITに10%投資するとしたら、国内株式のポジション5%、国内債券のポジション5%を使って、合わせて10%投資すると良いと思います。

<J-REITを組み入れる前後のアセット・アロケーション>

【投資前】国内株式25%、国内債券25%、外国株式25%、外国債券25%

【投資後】国内株式20%、国内債券20%、J-REIT10%、外国株式25%、外国債券25%

運用には「攻め」と「守り」が必要

 私はかつて25年間日本株のファンドマネージャーとして、年金などの運用に携わってきました。アセットアロケーション(資産配分)を考える際に悩むのは、「攻めと守りのバランス」です。

「攻め」だけ考えるならば、米国・日本を含む世界中の株に分散投資すれば、それでOKです。債券に投資しても、長期的に株を上回るリターンは期待できません。特に、長期金利が0.5%に抑えられている国内債券は、ほとんど投資する価値がありません。

 ただし、年金投資において、現実には株だけというわけにはいきません。株はボラティリティが極めて高いからです。リーマン・ショックや新型コロナウイルス・ショックのようなことがあったとき、株だけで運用していたら、一時的に巨額の損失をこうむります。国民の老後資金を預かって運用する年金基金は、たとえ一時的でも大きな損失を出すわけにはいきません。

 日本最大の年金基金で191兆円の運用資産を保有するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオは、その意味で参考となります。現在、外国株式25%、日本株式25%、外国債券25%、国内債券25%を、運用の基本方針としています。株が半分、債券が半分で、まずまずバランスのとれた運用と言えます。

 ただし、明らかに違和感を覚えるのが、国内債券に25%も資金配分していることです。10年国債利回りが0.5%しかない今、国内債券に投資するのは非効率だと思います。国内債券で無理にリターンを狙いにいくと、ジャンクボンド(低信用債)や超長期債(30年国債など)を買うことになります。信用リスクや金利上昇リスクを負うのは適切とは思えません。

 それでは、国内債券の代わりに、円建ての利回り商品で何に投資したら良いでしょう? しばしば話題になるのが、J-REITです。株のポートフォリオに、J-REITを入れれば、長期的に運用の安定化に一定の寄与はあります。

 ただし、J-REITが有効なのはあくまでも長期的なリターンの安定化にとってです。短期的には、J-REITはまったく債券代替となりません。リーマン・ショックやコロナショックで株が暴落する時、J-REITも同じように暴落してきたからです。