コロナショックでREITが日経平均よりも大きく下落

 J-REITの平均分配金利回りは今、約4.1%です。長期投資するのに、魅力的な水準です。ただし、J-REITに分散投資する際に、一つ知っておかなければならない「不都合な真実」があります。

 コロナショックでは、J-REITに投資していても、リスク分散効果はありませんでした。以下のグラフをご覧いただくと分かる通り、コロナショックが起こった時、東証REIT指数も日経平均株価も急落しました。しかも、東証REIT指数の下げは、日経平均よりも大きかったのです。

<東証REIT指数と日経平均比較:2019年末~2023年4月24日>

出所:QUICKより楽天証券作成、2019年末の値を100として指数化

 利回り商品であるはずのREITがなぜ、こんなに大きく下がってしまったのでしょう。コロナ禍では確かにホテルREITや流通(小売り)REITが大きなダメージを受けました。

 ただし、REITの大半を占めるオフィスREITが受けたダメージは軽微でした。レジデンシャルREITはほとんどダメージがありませんでした。物流REITはコロナ禍による無店舗販売拡大で、業績がますます好調に推移しました。

 つまり、コロナ禍でREIT全体が受けたダメージは、日本株全体が受けたダメージよりも軽微だったのです。にもかかわらず、東証REIT指数の方が、下げが一時的に大きかったのはなぜでしょう。

 コロナショックが起こると同時に、REITを一斉に売ったのは、主に国内の金融機関でした。金融危機が起こりそうになると、金融機関はリスク資産を減らして流動性を確保しようとします。ただし、流動性の低い不動産を急に売ることはできません。

 そこで、売ろうと思えば売ることができるJ-REITを、不動産を売る代わりに一斉に売ってきたと考えられます。結果として、J-REITはコロナショックで株以上に下落し、債券代替としての役割をまったく果たしませんでした。

 東証REIT指数は、2008年のリーマンショックでも、一時、日経平均よりも大きく下げました。これまでの歴史を見ると、株とREITに分散投資しても、株の暴落局面でリターンを安定させる効果は、あまり得られていません。

J-REITの活用方法

 株が暴落する時にいっしょに暴落してきた過去を見ると、J-REITを国内債券の代替にはできません。ポートフォリオでは、国内株式の一部としてリスク管理していくことが必要でしょう。

 ただし、普通の金融環境の2014~2018年のように、株と逆の動きをすることもあります。一般の株とは明らかに異なる値動きです。債券のように動くこともあるし、株のように動くこともある資産としての特徴があります。

 成長性はないが利回りの高い「高配当利回り株」と近い存在と位置付けて、ポートフォリオに組み込んでいくことで、長期的な利回りの安定化に寄与すると思います。