INPEXの三つの潜在リスク
一方で、不安材料もあります。特に私が重視しているのは、以下3点です。
【1】資源ナショナリズムのリスク
最大のリスクは、資源ナショナリズムです。海外に保有する権益はいつでも資源ナショナリズムによって接収されるリスクがあります。
現在、友好国中心に権益を保有しているとは言っても、その友好関係がなんらかの理由で崩れるリスクは常にあります。
国交断絶にならない限り、さすがに無償で権益を没収されることは無いと考えられますが、それでも友好関係が崩れると不当に低い対価で権益を奪い取られるリスクが生じます。
日本企業が保有する権益に対し、「環境アセスメントで問題あり」など難癖をつけて取り上げることが考えられます。
友好国であっても法人税率をどんどん高めることで実質的に利益を取り上げられてしまうこともあります。INPEXも既に海外事業で高率の法人税を取られています。
【2】脱炭素が進むことに伴うリスク
世界中で、脱炭素に向けた取り組みが進む中、化石燃料ビジネスを展開する企業は、「環境税」などのペナルティを科せられるリスクがあります。
これに対し、INPEXは2050年のCO2排出ゼロを目標としてさまざまな取り組みをしていますが、その効果が出るにはかなりの年数を要します。
【3】資源開発がさらに進み、エネルギー価格が下落するリスク
現在、欧州を始め世界中で天然ガスの供給不足が深刻化し、ガス価格が高騰しています。供給不足は長期化が予想され、解消のメドはたっていません。
ただし、より長期の視点にたてば、米国などでさらに資源開発が進み、数年後にエネルギー価格が急落するリスクもないとは言えません。
ただ、上記に挙げたリスクを勘案しても、先に解説した六つのポイントから、INPEXに投資する価値は高いと判断しています。
ご参考まで、同社の2014年3月期以降の業績推移を以下に掲載します。
INPEXの売上高・営業利益・当期利益推移:2014年3月期(実績)~2022年12月期(会社予想)
決算期 | 売上高 (億円) |
営業利益 (億円) |
純損益 (億円) |
||
---|---|---|---|---|---|
2014年3月 | 13,346 |
最高益 7,336 |
1,836 | ||
2015年3月 | 11,712 | 5,348 | 778 | ||
2016年3月 | 10,095 | 3,901 | 167 | ||
2017年3月 | 8,744 | 3,364 | 461 | ||
2018年3月 | 9,337 | 3,573 | 403 | ||
2019年3月 | 9,713 | 4,742 | 961 | ||
2019年12月 9カ月変則 |
10,000 | 4,986 | 1,235 | ||
2020年12月 | 7,710 | 2,484 | ▲1,116 | ||
2021年12月 | 12,443 | 5,906 |
最高益 2,230 |
||
2022年12月 (会社予想) |
23,020 |
最高益 12,410 |
最高益 4,000 |
||
出所:同社決算資料より作成、▲は赤字 |
原発関連株にも注目
日本のエネルギー安全保障を考えると、安全性の基準を満たした原子力発電所を再稼働していくことは必須と考えています。
そうなると、長らく低迷していた「原発」関連株の投資価値は高まると考えられます。
したがって、日本のエネルギー安全保障に貢献する企業として、原発関連株にも投資していきたいと思います。
その候補企業は既に私の頭の中にあります。ただし、まだ調査が完了していないこと、投資の条件が完全には整っていないと考えていることから、現時点では皆さまに投資の参考銘柄はお示ししません。
後日、条件が整ったと考える時点で、原発関連株について、改めてリポートを書きます。
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