「ルール乱立」は「不自由の温床」

 1990年ごろから、民主主義を良しとする国で、ある変化が生まれていました。「ルールの乱立」です。以下は、日本における法令と条約の数です。

図:日本における現行法令・条約の数

出所:e-Govポータルのデータをもとに筆者作成

 1990年代に法律の制定や条約の締結が加速したことが分かります。

 立法体制が充実している民主主義国家では、何か問題ごとが起きたとき、ルールを作り、以後、同様の問題が起きないようにします。また、新しいことを始めようとしたり、新しいことが起きたりしたときも、ルールを作り、そうしたことが社会に害を与えないようにします。民衆の意見を反映させ、ルールを作ることもあります。

 民主的であればあるほど、そして時間がたてばたつほど、ルールは増えるわけです(廃止されるルールの数よりも制定されるルールの数の方が多い)。グラフのとおり、法律だけではなく、他国と結ぶ条約も、民主的であればあるほど、そして時間がたてばたつほど、増える傾向があります。

 ルールが乱立すると何が起きるのでしょうか。できないことが増えます。できないことが増えると、窮屈さや不自由さが強まります。「純粋化すればするほど、不安定化する」と述べたのは、日本の著名な経済学者である岩井克人氏です。これは同氏が資本主義の本質について語った際に用いたフレーズです。

 民主主義体制下ではルール作りが絶えず行われています。主な目的は、社会の中の問題を解決するためですが、その果てに到達する「純粋な社会」はどのような社会なのでしょうか。岩井氏の言葉を借りれば、「不安定な社会」となるのではないでしょうか。