近年、民主的な国は減少傾向に

 実は近年、民主的な傾向が強い国(指数が0.6以上の国)の数は減少傾向にあります。逆に民主的でない国(同0.4以下の国)の数は増加傾向にあります。以下がそれらの推移です。

図:自由民主主義指数0.4以下および0.6以上の国の数(1945~2021年)

出所:V-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 民主的な国の減少、民主的でない国の増加がはじまったのは、2016年ごろからでした。2016年というと、英国のEU(欧州連合)離脱を問う国民投票で離脱派が勝利したり、トランプ氏が米大統領選挙で勝利したりした年、他よりも個を重視するムードが高まった年です。

 第二次世界大戦直後、民主的でない国は徐々に減少し、それと同時に民主的な国が増え始めました。戦後体制が整う中で、国際的な枠組みやルール整備が進み、社会が民主的であることが良いとされるムードが高まっていた時代です(民主的であることが平和を呼び込むきっかけでもあった)。

 しかし、ベルリンの壁崩壊(1989年)、EU発足(1993年)などが実現した1990年あたりから、民主的な国は増加しなくなります。民主的でない国の減少はまだ続いていたため、民主的であることが否定される時代に入ったわけではなかったものの、民主的であることが推奨されにくくなったことがうかがえます。なぜ、民主的であることが推奨されにくくなったのでしょうか。