インフレ加速のリスクとFRBの選択

 インフレリスクについては、ウクライナ情勢や経済制裁によって、これまでも上昇していた資源や食料が一段と上昇するリスクが予想され、各国の中銀が進めている金融引き締めを加速させるのかどうかに注目です。

 一方で、ウクライナ情勢や経済制裁は世界経済を後退させることも予想されるため、中央銀行は難しいかじ取りに直面することになります。

 3月2~3日にパウエル議長の議会証言が予定されています。この議会証言で利上げや景気についてどのようなメッセージを発信するのか注目です。

 今後のFOMC(米連邦公開市場委員会)は年内に3月(15~16日)、5、6、7、9、11、12月の7回ありますが、毎回0.25%利上げすると、政策金利はゼロから年末には1.75%となります。

 ウクライナ侵攻前まではこの利上げペースがメインシナリオでしたが、ウクライナ情勢が長引くと、インフレリスクが一層高まり、利上げ幅を拡大するシナリオになるかもしれません。

 あるいは景気停滞を考慮し、利上げ回数を減らすなどペースを落とすシナリオになるかもしれません。パウエル議長はどのようなシナリオに軸足を置くのか注目です。

 今後、ウクライナ情勢は徐々に相場に織り込まれ、景気や物価への影響が焦点になり、各国の金融政策が材料になっていくことが予想されます。為替については、ドル高、円高が予想され、特にユーロ安の長期化が予想されます。

 ドル/円の上値はユーロ/円などの円高により重たくなっていますが、日米の金融政策の違いが今後さらに鮮明になっていくと、徐々に下値を切り上げる展開が予想されます。

 ただ、実質実効為替レートが50年来の円安水準にあることや、FRB(米連邦準備制度理事会)の年内利上げはかなり織り込まれているため、上値は限定的になるとみています。テクニカルポイントとしては、2016年12月の118.66円に注目しています。

 円高シナリオとしては、ウクライナ情勢の早期停戦合意やインフレ沈静化、あるいは景気後退懸念により、FRBの利上げペースが遅くなるシナリオです。

 また、日本のCPI(消費者物価指数)が4月以降、携帯通信料の値下げ要因剥落によって1%台後半に上昇する見通しであり、そのタイミングで日本銀行の緩和姿勢に変化が生じればかなりの円高要因になるかもしれません。