米5月雇用者数は予想大幅に上回り、利下げ年内1回の見方優勢に

 まもなく、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果が発表されます。先週7日(金)に発表された米5月雇用統計によって、市場ではFRB(連邦準備制度理事会)が9月に利下げに踏み切るとの観測は後退しました。

 米5月雇用統計の非農業部門雇用者数は、予想の前月比18.5万人増を大きく上回る27.2万人の増加、失業率は4.0%と前月の3.9%から悪化しましたが、平均時給は前月比0.4%増と前月(0.2%)も予想(0.3%)のどちらも上回る強い内容でした。

 この結果を受けて、長期金利は上昇しドル高に、9月利下げ観測は後退し、据え置きとの見方が上回ったことで、利下げは11月か12月の年内1回との見方となったようです。

FOMCの政策金利見通し、利下げ年内1回ならドル高か

 今週は11~12日にFOMCが、13~14日に日本銀行金融政策決定会合がそれぞれ開催されるため、週後半は乱高下が予想されます。

 まず、FOMCについては、政策金利(5.25~5.50%)は維持されるとの見方が大勢です。従って、注目は金利見通し(ドットチャート)になります。

 3月時点では今年末の金利見通しは4.6%でした。現在の5.25~5.50%から0.25%刻みで利下げを年3回する見通しでしたが、上方修正されることが予想されます。注目は3月時点の4.6%から4.9%になるのか、5.1%になるのかという点です。4.9%であれば年2回の利下げ、5.1%であれば、年1回の利下げとなります。

 4.9%に上方修正された場合、年1回ではなく2回との期待からドル安に動く可能性もあるため注意が必要です。

 一方、5.1%に上方修正された場合はドル高につながりそうです。ただし、次回9月の利下げ観測も根強く残っているため、ドル高、金利高は限定的だと思われます。9月までのデータ次第では9月利下げ観測再浮上の可能性もあるため、市場のドル買い意欲も慎重になると予想されます。

 9月のFOMC開催までに月次の雇用統計やCPI(消費者物価指数)はそれぞれ3回発表される予定なので、発表の都度、利下げへの見方が変わる可能性があります。

 年内利下げなしというシナリオもありますが、FRBとしてはデータ次第でやはり時期は示さなくても利下げ方針は変えないのではないでしょうか。そして8月下旬の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でFRBのパウエル議長は9月以降の利下げを示唆するのではないかとみています。

 ジャクソンホール会議でのFRB議長の講演は、その後の金融政策を示唆する講演が多いため毎年、世界の関心を集めています。

 今回のFOMCで発表される金利見通しは、今年末だけでなく、来年2025年末の見通しにも注目する必要があります。3月時点の見通しでは3.9%となっており、2024年から3回の利下げ見通しとなっていますが、2024年が上方修正された場合、2025年も上方修正される可能性が高いです。

 そのため、2025年の利下げ回数が3回より少なくなるのか多くなるのかに注目すると、来年以降の緩和姿勢を読み取ることができます。

 そして今回のFOMC会期中の12日には5月CPIが発表されます。横ばいか上昇鈍化予想となっていますが、FOMC決定に影響を与える指標が出るのかどうか注目です。