FOMC年内利下げ見通し1回となるも、今後の物価次第で2回の可能性も

 先週の重要イベント、米国の5月CPI(消費者物価指数)公表とFOMC(連邦公開市場委員会)、日本銀行の金融政策決定会合を終えて、ドル円は上下に乱高下しました。しかし、その値幅は少なく、結局は若干の円安となったものの、ほとんど水準は変わっていません。

 ただ、イベントの内容で方向感が定まらなかった一方で、今後の先行きを示す重要な内容でした。まずは、12日から14日のドル円の動きをイベントとともに振り返ってみたいと思います。

 12日のFOMCの結果発表前に米5月CPIが発表されました。米5月CPIの上昇率は前月比0.0%、前年同月比3.3%と市場予想を下回りました。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIも4月より伸びが鈍化しました。このことから、年内の利下げ観測が強まってドル売りとなり、1ドル=157円台前半から155円台後半の円高となりました。

 しかし、その後、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)がFOMCで政策金利(5.25~5.50%)の予想通り据え置きを決定した一方、今年末の政策金利見通しが前回3月時点の4.6%から5.1%に上方修正しました。これは年内の利下げ想定が3回から1回に減ったことになります。

 市場では、年内の利下げ回数が3回から2回に減るとの見方が大半だったことや、参加者のうち4人が年内利下げゼロを予想したことから、1ドル=156円台半ばに上昇しました。さらに、FRBのパウエル議長は記者会見でタカ派色は薄めたものの、ハト派姿勢を強めることもなかったため、米金利が上昇する中、1ドル=156円台後半に上昇しました。

 このようにCPIの低下で利下げ観測が強まり、一時はドル売りの動きとなっていましたが、FOMCの引き続き利下げに慎重な姿勢を受けて再びドル売りは後退しました。これによりドル円は「往って来い」の相場となり、CPI、FOMC前後で50銭程度の円安にとどまりました。

 今回の金利見通しで、年内利下げ回数が3回から1回に引き下げられた点について、あくまで中央値が1回ということです。FOMC参加者では、年内利下げを2回と見込むのが19人中8人と最も多く、1回は7人であったため、今後のデータ次第ではこの見通しが変わりやすいことが予想されます。

 パウエル議長はCPI発表後も、多くの参加者が金利見通しを発表しなかったと述べており、今回のCPIの伸び鈍化に対して、かなり慎重姿勢になっていることがうかがえます。

 つまり、来月のCPIも鈍化傾向を示せば、FOMC参加者の見方が変わる可能性が大いにあるということです。年内利下げ回数は2回にすぐ変わる可能性もありそうなので、年内1回というよりも、年内1~2回とみた方がよさそうです。

 また、来年2025年の利下げ回数は3月の3回から4回、2026年も3回から4回に増えています。2024年と合わせた利下げ回数は、3月時点から変わらず9回という点は留意しておく必要があります。足元では利下げに慎重姿勢ですが、利下げ方針に変化はないことが読み取れます。