ロシアへの経済制裁は日米欧にも影響

 26日に表明された欧米諸国による追加制裁はかなりロシア経済に打撃を与えることが予想されます。追加制裁とは、国際決済ネットワークの**SWIFTからロシアの銀行を排除することやロシア中央銀行への制裁です。

**SWIFT=国際銀行間通信協会。世界の銀行間の金融取引の仲介と実行の役割を担う団体

 資金決済ができなくなれば貿易ができなくなります。また、中央銀行の外貨準備が使えなくなれば、ルーブル安を防衛するための為替介入ができなくなります。

 為替介入とは、ドルなどの外貨を売って、自国通貨のルーブルを買い、下落を止めることですが、その元手となる外貨を使えなくなるため、通貨安防衛には金利を引き上げることしかありません。28日、ロシア中銀は過去最安値を更新しているルーブル安を止めるため政策金利を9.5%から20%に引き上げました。通貨安はインフレ加速につながるからです。

 SWIFTから排除されると経済が打撃を受けます。過去にはイランが核開発計画で緊張が高まった2012年と2018年にSWIFTから排除されています。その時、通貨は1/6、輸出は1/3となり、イランのGDP(国内総生産)は2012年▲7.4%、2018年は▲6%とマイナス成長に陥っています。

 既に24日のウクライナ侵攻以降、ロシア株やルーブルは暴落しており、ロシア主要銀行が破綻の危機に晒されています。今後、経済制裁によってロシア国内のモノ不足やインフレが加速すれば国民の不満が高まり、プーチン政権への批判が高まることが予想されます。

 ただ、ロシアに対する決済や貿易の制限はブーメラン効果として日米欧諸国に跳ね返ってくることも予想されます。既にロシアとの取引が多い欧州銀行株は大きく売られています。長期戦になればなるほど日米欧にもそれなりの影響が出てくることは警戒する必要があります。持久戦は避けたいところです。

 今回の戦争で特徴的なのは、SNSが駆使され世界中に反戦デモが広がり、この国際世論の高まりが欧米首脳に強力な経済制裁を決めさせたという点です。***大ロシア主義の回帰(*)をもくろむプーチン大統領が仕掛けた戦争は、SNSを通じた世界中の視線との戦いという新しい戦争の形となっています。

 反戦運動の世界的な広がりがロシア国内にも広がり、早期の停戦合意に至るシナリオも想定されます。

***大ロシア主義の回帰…ウラジミール・プーチン大統領のキエフ公国回帰への野望。

キエフ公国の領土は現在のモスクワを中心としたロシア西部、ベラルーシ、現在のキーウを中心としたウクライナ西部が一体となった地域。988年、キエフ大公ウラディミル1世は、コンスタンティノープルに軍隊を南下させてビザンツ帝国に脅威を与えた人物。自らギリシア正教に改宗し、公認の宗教として取り入れビザンツ文化を受容、「ビザンツ化」を推進した。ウラディミルはプーチン大統領と同じ名前。