米中対立が激化。財政も米国のリスクになるか?

 もちろん、上述したファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)以外の要因が米国株価を揺らす可能性もあります。3月15日と17日に史上最高値を更新したS&P500指数が、今週上値の重い動きとなった要因として「米中対立の激化懸念」が挙げられます。

 米国は西側同盟国と協調し、中国での少数民族ウイグル族への扱いが「人権侵害」にあたると主張し、中国政府当局者への制裁を発表。中国は「内政干渉である」として猛反発しています。新しい東西冷戦が「東西熱戦」となれば、株式市場への影響は免れないと思われます。

 一方、近日中に公表されるとみられるバイデン政権の「新経済対策」(景気対策・第2弾)の内容と影響も警戒されています。大統領が選挙公約としていたインフラ整備やクリーンエネルギー投資拡大が盛り込まれる点は良いにしても、財政規模が3兆ドル(約330兆円)に達するとの観測が報道されています。

 イエレン財務長官は就任後に初めて出席したG7会合(財務相・中央銀行総裁会議/2月13日)で「(財政出動を)今こそ思い切りやるべき時だ」(Go Big)と発言し注目された経緯があります。

 巨額の財政出動が長期金利上昇要因となるリスクを否定できない一方、歳出の財源として「法人税増税」、「高所得者向け増税」、「富裕層増税」が盛り込まれる可能性も警戒され始めています。

 米国株式は、経済指標、長期金利、企業業績の動向だけでなく、FRB高官やバイデン政権高官の言動に一喜一憂する展開も想定されます。とはいうものの、筆者は、「米国株式はいまだ強気相場の途上にある」と判断しています。

 スタイルローテーション(割安株と成長株の物色交代)を交えつつ、短期的な調整を経ながらも金融相場から業績相場に移行する過渡期にあるとも考えています。長期の時間軸で分散投資を続ける冷静な投資姿勢が肝要だと思っています。

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