市場が向き合う米政府と金融当局の「高圧経済」

 NT倍率の上下を含め東京市場に大きな影響を与える外部要因として、米国の経済と株価動向が挙げられます。特に、世界市場のリスク選好の強弱に影響するのが米国株動向です。

 図表4は、FRB(米連邦準備制度理事会)が3月17日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で公表した米国の実質GDP(国内総生産)成長率、失業率、インフレ率(物価上昇率)、政策金利の最新見通しです。( )内に2020年12月(FOMC)時点での見通しも示しました。

 金融当局は「前回予想を上回る実質成長率」、「前回予想を下回る失業率」、「前回予想を上回るインフレ率」を予想しましたが、前回と同様に「政策金利は2023年末まで据え置く」と予想しています。

 FRBのメインシナリオは、成長率や物価の一時的な加速を容認しつつ、コロナ禍の影響が甚大である雇用の回復を最大化させる(労働参加率の引き上げと失業率を引き下げる)ために金融緩和を長期化させる「高圧経済」(High Pressure Economy)を実践する方針を示しています。

「高圧経済」とは、イエレン財務長官がFRB議長を務めていた2016年に表明した政策姿勢として知られます。現在のFRBを率いるパウエル議長は、イエレンFRB議長下で理事だった「上司と部下」でした。

「高圧経済」は、雇用回復を優先するハト派的な政策方針とされ、長期金利(10年国債利回り)上昇はリフレ期待を織り込む合理的な動きと考えられます。

 とはいえ、ゼロ金利の継続と長期金利上昇(=低水準での長短金利差拡大)は現時点で株式市場の弱気材料と考えていません。FRBとの対話を介し、株式市場が高圧経済を受け入れるか否かに注目です。

<図表4:FRBは「高圧経済」の実践を示唆した>

*3月17日FOMCでFRBが公表した見通し(FOMCメンバーの予測中央値)
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成