米国株が強い3つの理由

 2018年以降、米国株が、日本株や中国株より強い理由は、以下3点です。

【1】貿易戦争のダメージが製造業に集中

 日本と中国は、ともに製造業王国。産業構造を見ると製造業の比率が高く、貿易戦争のダメージを受けやすい構造です。

 米国も製造業だけ見ると、業況悪化が顕著です。ところが、米国では早くから製造業の空洞化が進んでいます。既に製造業への依存は小さくなっています。

 代わって、ITやヘルスケア、金融など、非製造業の構成比が高くなっています。経済構造の違いゆえ、貿易戦争のダメージは日中に重く、米国には比較的軽くなっています。

【2】IT大手の力の差が歴然、米企業が世界のITインフラを支配

 グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフトなど世界のITインフラを支配する米IT大手が高収益を稼ぐ中、日本のIT大手の業績は冴えません。

 米IT大手が世界のITインフラを支配して稼いでいるのに対し、日本のIT大手は狭い日本で過当競争に陥り、収益が悪化している例が増えています。

 中国には、アリババ、テンセント、バイドゥなど、中国市場を支配して巨大化したIT大手があります。中国政府が米IT大手の参入を拒絶したおかげで、中国のIT大手が中国市場を独占的に支配して成長してきました。

 ただし最近、米トランプ政権が、中国の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」と対話アプリ 「微信(ウィーチャット)」を運営する中国企業(バイトダンスとテンセント)を、安全保障上の理由から、米国から締め出す動きを見せるなど、中国のIT企業の先行きに暗雲が生じています。

【3】シェール・オイル&ガス革命の恩恵が米国に大きい

 米国はかつて、世界最大の原油輸入国でした。ところが、シェール・オイルの増産が続き、2018年には世界最大の産油国となり、原油を輸出するようになりました。

 かつて採掘することができなかったシェール層から大量のシェール・オイル、シェール・ガスを産出するようになった効果は大きく、米国経済の競争力を高めました。

 この大きな変化を、シェール・オイル&ガス革命と呼びます。2020年に原油価格が急落しましたが、それでもシェール革命の恩恵は今も続いています。

<参考>米ナスダック総合指数と、NYダウの違い
 米国のナスダックは、日本のジャスダックや東証マザーズと同様、新興企業が新規上場する市場です。ただ、日本と異なり、ナスダックに上場した新興企業は、急成長し、時価総額が大きくなってもそのままナスダックに留まっています。

 日本では、ジャスダックや東証マザーズに上場した新興企業は、成長して時価総額が大きく伸び始めると、ことごとく東証一部に移ってしまいます。ところが、ナスダック上場企業は、大きくなっても、日本でいえば東証一部に相当するNYSE(ニューヨーク証券取引所)に移ろうとせず、ナスダックに留まっています。

 新興企業がナスダックに上場し、そのままナスダックにとどまるので、NYSEはだんだん相対的にオールド企業が多くなっていきます。

 NYダウは、もともとNYSE上場の時価総額の大きい30社から構成されるNYSEの指数でしたが、ナスダック上場企業を入れないと、新興企業が少ない指数となってしまうので、今はナスダック上場の4社、マイクロソフト、インテル、アップル、シスコシステムズを、ナスダック上場のままNYダウに組み入れています。