手元に定期預金があることは、3つの価値がある

 あなたのポートフォリオに、「手元の定期預金」も意識することは、資産全体で管理をするという意味で大きなステップアップとなり、そこには3つの価値があると思います。

1:ポートフォリオ全体のリスクを抑える

 手元の安全性資産の存在は、資産全体でのリスクを下げます。確定給付型の企業年金では基本ポートフォリオを作成するにあたって、生命保険会社の一般勘定(*)の保有割合を議論します。これは資産全体のリスクをコントロールする重要な役割があるからです。企業年金運用は期待リターンを高めることと、リスクを抑えることのバランスを常に意識しなければいけませんが、そのカギとなっているわけです。

*編集部注「一般勘定」:生命保険会社は契約者から預かった保険料を「一般勘定」と「特別勘定」の異なる箱に分けて管理・運用している。一般勘定は元本と一定の利率を契約者に保証し、運用のリスクは保険会社が負う。特別勘定は、運用によって給付が変動するため、リスクは契約者が負う。

 生保一般勘定は個人が購入することができません(その逆に、企業年金は銀行預金を持つことができない)。そのため、個人にとっての安全性資産となるのは銀行預金ということになります。安全性資産は期待リターンが低いものの、元本割れリスクがほとんどない資産クラスと位置づけられます。

 ですから、個人が自分の財産を大きく2分割して、[定期預金7:投資割合3][定期預金5:投資割合5][定期預金3:投資割合7]などと、その割合を考えることがリスク管理の一番大事なところです。

 そして、これは個人が「主体的に決断できるリスク管理」でもあります。マーケットリスクを個人が制御できなくても、ポートフォリオのリスク割合は自らが(欲望に負けなければ)制御できるからです。