花王は国内市場の連続増配記録をリードする「31年連続増配」へ

 東証上場の連続増配銘柄のなかでも、花王(4452)の「30年(期)連続増配」実績は出色と言えます。同社は、「安定成長ビジネス」と呼ばれる一般消費者向けの洗顔・全身洗浄剤、衣類用洗剤、おむつ、化粧品、産業用の油脂製品や機能性材料製品を国内・海外で製造・販売している主力企業です。花王は2月に「2020年12月期の1株当たり配当金(DPS)も前期(2019年12月期)比で増配となる」との見通しを発表しました。

 昨年の1株当たり配当金は130円(実績)で、本年は140円(市場予想平均)と前期比+10円増配(増配率は+7.7%)が見込まれています。本年の増配が実現すると、国内上場企業における「連続増配の最長不倒記録」は30年(期)から31年(期)に更新されることになります。

 図表3が示す通り、花王の1年前比株価騰落率は+7.4%と、TOPIXの同騰落率(▲13.3%)を大きくしのいでいます。また、過去5年総収益率(配当込み/年率平均)も+9.2%とTOPIXの▲0.6%より優勢でした。

 花王が経営方針として「安定的・継続的な配当の実施を通じた株主への利益還元」を重視し、1989年から「毎年(期)増配」を実現してきた実績への投資家(市場)の信頼感が株価の相対的堅調に繋がっていると考えられます。

 実際、図表4の通り花王の株価は30年前(1989年末)比で約6倍となってきました。加えて「30年連続増配」の結果として、1株当り配当金も1989年の実績と比較して約18.3倍に増加してきました(株式分割の影響を調整済み)。

 花王は、「コロナ危機」に対応するため、消毒液の生産・供給に力を入れ、製造委託先との協力体制を強化。国内の自社工場も活用し、5月には「前年比20倍に相当する月産200万リットルの消毒液生産体制を整える」と表明しました。中長期の視点に立ち、花王の総収益(株価リターン+配当リターン)の優勢にあらためて注目したいと思います。

<図表4>国内の連続増配記録をリードする花王の「実績」に注目

(注)上記した株価と1株当り配当金(DPS)は当該期間における株式分割の影響を調整したものです。
(注)上記は参考情報であり、将来の投資成果を保証するものではありません。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1989年から2019年までの実績)

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