“総悲観”は一巡?金融・財政・医療の面で対策が加速

 危機が発生した際、金でさえ売られることがあることについては以前の「金は4%、原油は14%下落。新型コロナのパンデミック化で、原油投資は長期投資の時代へ突入か!?」で述べました。

 リスク資産から手を引き、ドルを手元に戻す“換金売り”が生じれば、金でさえ売られます。これはリーマンショック後にも発生しました。ドルを手元に戻すことは、現金が最も有利な資産保有の手段だとみなすこととほぼ同義と言えます。

 “総悲観”の中ではこのような換金売りが発生することがありますが、いずれそれも一巡します。先述のドルと金の値動きが反転した3月19日を含む3月の3週目以降、さまざまな新型コロナウイルスの感染拡大への対策が目立ち始めています。

 先進国の当局が協調して金融面で景気後退を食い止めようとしています。また、各国の政府が過去最高水準の規模で、財政面で対策にあたっています。さらには、新型コロナウイルスの治療薬の開発やルール整備が急ピッチで行われています。

 引き続き、新型コロナウイルスの世界的な危機は続くと見られますが、各方面での大規模な対策が進んでいることもまた、事実です。このような大規模な対策が打ち出されたことは、市場を総悲観から正常な状態に戻したと筆者は考えています。

 ドル買いが一巡したことが直接的な要因だとしても、金相場が現在のような危機的状況で上昇することはある意味“正常”だと言えます。そして足元の金価格の上昇は、各種市場を取り巻く環境が、総悲観からゼロ地点に戻ったことを象徴する出来事だと筆者は考えています。

 とはいえ、金相場を考える上での全般的な話として、ドルの動向も有事の発生も、金相場にとっては一つの材料に過ぎません。以下のとおり、金相場の材料は有事ムード、中央銀行、代替資産、代替通貨、宝飾需要など、少なくとも5つの材料を、時間軸に留意しながら俯瞰する必要があります。

図:金市場を取り巻く環境(イメージ)

出所:筆者作成