債務のためのゴミ箱と化した新しいFRB

 今週、FRB(米連邦準備制度理事会)はルビコン川を渡ってしまった。無制限QE(量的緩和)を実施し、「すべての不良債権を引き受ける」と発表したのである。これによって野放図にバブルで踊っていた企業は、抱えている不良債権をFRBというゴミ箱に合法的に投棄できる環境が整った。これをうけて、3月24日のNYダウは+11%と1933年以来で最高の上昇を記録している。

NYダウ(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル 売りトレンドはピークアウトするか!?

出所:石原順

 今回のFRBの措置は、金融システムの保護より、「株価つり上げ」が目的だったと報道されている。トランプ大統領への忖度であろう。中央銀行の独立性などなにもないことが誰の目にも明白となった。新型コロナウイルス騒動で実体経済が壊滅的状況にあるなか、株価だけが上がっていくというのは極めて不自然な現象だが、株価下落が止まらない場合、FRBは最終的に株(ETF[上場投資信託])買いに動くとみられている。

 中国型の国家資本主義で米国もバブルの温存に動き出したわけだが、中央銀行がモラルハザードフリーマネーという「禁じ手」に手を出してしまったことで、FRBの信認は大きく低下している。「劇薬には強烈な副作用がある」ことを、頭の隅に置いておきたい。

上海総合指数(日足) PKO(プライスキーピングオペレーション/価格維持政策)や空売り禁止も効果なく、「いってこい」の展開に…

出所:石原順